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現在相場考察

かなり特別なモデル、パテックフィリップクロノメトロゴンドーロ5098P

2017年12月19日更新
パテックフィリップのゴンドーロについて斉藤由貴生が執筆。本記事では2011年夏頃の安値(タイムトンネル)と2017年12月の安値(楽天)を比較し現在相場を考察。このでの変動は¥280,200だった。

クロノメトロゴンドーロ 5098P-001についての考察(2017年12月)

ゴンドーロといえば、パテックフィリップの角型を担うカテゴリという印象ですが、そのシリーズに意外な見た目が追加されたのは2007年のこと。

5098Pが出た当時は「あのブランドにそっくり」と思った人が多かったのではないでしょうか。

一見すると天下のパテックフィリップが他ブランドに触発されてそっくりな時計を作ってしまったのか、思ってしまいます。

しかしこの時計、実は1920年代にパテックフィリップ自らが作った「クロノメトロゴンドーロ」の復刻版ともいえる存在なのです。

当時のゴンドーロは、ブラジルの販売店向けとして造られたシリーズで、懐中時計を含めいくつかのラインナップが存在。それらシリーズの名称が「クロノメトロゴンドーロ」であり、それが現在のゴンドーロの名前の由来です。

けれども、現在のゴンドーロが登場したのは1993年

現在のゴンドーロと1920年代のクロノメトロゴンドーロとの結びつきは弱いように感じますが、5098はそれらを繋ぐ役割を果たしているように感じます。

元となった1920年代のゴンドーロは、あのブランドに多大な影響をもたらしただけではなく、実はパシャCの文字盤にもその影響を感じることができます。5098Pの文字盤をよく見ると、「12、3、6、9」のフォント形状がパシャCの白文字盤などとよく似ていることに気づきます。

このように、複数の時計がインスパイアするほど、1920年代に登場したクロノメトロゴンドーロはとてもすごい存在なのです。

そのためパテックフィリップがこの時計を復活させるということは、とても特別なことであり、その特別さを5098Pからは感じることができます。

  • 2針である5098のために新ムーブメントを開発
  • 手掘りの凝った文字盤
  • 文字盤が金無垢製
  • という要素から、いかに5098が気合が入ったモデルかが分かります。

    これだけ凄い要素が満載のクロノメトロゴンドーロ。相場はいかにも凄いことになっているという感じがします。

    しかし、意外にも地味な値動きとなっているのです。

    本記事で参考とした中古腕時計

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    本記事の価格比較

    腕時計 状態 期間 2011年夏頃の安値(タイムトンネル) 2017年12月
    の安値(楽天)
    変動額 残価率
    パテックフィリップ
    クロノメトロゴンドーロ
    5098P-001
    中古 6 ¥2,699,800 ¥2,980,000 280,200 110.38%

    この時計、特別なパテックフィリップであるのにもかかわらず、現在相場は他のプラチナ製シンプルモデルと大差ありません

    実際、5196P5107Pの現在価格を見て分かる通り、どれも300万円前後という水準です。

    また、値動きも腕時計が全体的に安かった2011年から大きく変わっておらず、この数年において長らく200万円台後半という相場となっています。

    2011年は現在400万円以上のノーチラス5711/1Aや250万円以上のアクアノート5167/1A150万円以下で買えた時代。

    その時代から相場が28万円しか変わっていないという5098Pは、意外とお得感がある存在なのです。

    では人気がないのかと思いきや、最近300万円前後の個体がいくつか売れていることから、そんなことは無い模様です。

    実際これだけ気合の入ったモデルかつ、歴史的にも重要な存在ですから、不人気要素を感じません。

    この時計、後にローズゴールドモデルが追加されましたが、デビュー当初はプラチナだけのラインナップだったということからも、「特別なモデル」というという印象です。

    そして今となっては、プラチナ、ローズゴールドどちらも生産終了。

    これだけ特別なモデルですから、今後コレクターズアイテムとなっても不思議ではありません。

    よって現在300万円前後の選択肢としては、とても良いと感じます。

    とはいえこの時計、コレクターズアイテムというキャラクターにふさわしい一方、装着していたらパテックフィリップとは違う時計だと思われる可能性が高そうです。以前ロールスロイスを買ったのに半値以下のアメ車と間違われて、落ち込んでいた人を見たことがありますが、それに近い感覚というのは使う際にフラストレーションがたまるポイントとなるかもしれません。

    とはいえ、そんなことは関係ないぐらいこの時計には良い要素が満載で、その濃いキャラクター性によりフラストレーションも吹っ飛んでしまうかと思います。

    この記事の執筆者
    斉藤由貴生
    腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。
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