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腕時計百科事典

パテックフィリップはどのような腕時計ブランドか|初心者向け解説

2018年4月8日更新

雲上ブランドと呼ばれるパテックフィリップ。数ある高級腕時計ブランドの中で頂点に経つこのブランドは、どのようなものであるのか、初心者の方にも分かりやすく解説したいと思います。

ブランドの特徴

パテックフィリップは雲上時計と呼ばれるブランドであり、腕時計作りの品質は最高レベルと言われています。そのため、価格もその内容に見合った高価な水準。まさに、品質も価格も最も高いブランドという印象なのが、パテックフィリップという存在です。

1.雲上時計とは

パテックフィリップは、オーデマピゲ、ヴァシュロンコンスタンタンとともに、三大雲上時計と呼ばれています。これは、雲の上に存在する手の届かない存在といった趣旨であり、最高級ブランドであることを象徴する呼び名です。雲上時計と呼ばれるブランドは、ただ単に価格が高いというだけでなく、腕時計そのものに対する品質にも定評がありますし、創業してから100年以上といったように、長い歴史を持つブランドです。三大雲上時計と呼ばれるブランドの中でも、パテックフィリップは古くからムーブメントを自社で製造するマニュファクチュール体制をとっています。また、技術力も優れており、例えば1996年には世界初の年次カレンダー機構を搭載したモデルを発表。年次カレンダーは、2月末以外のみ手動調整するほかは、「30日、31日」といった日付を自動的に調整する機構です。

2.永久的なメンテナンスが可能

腕時計には様々な部品が使われていますが、部品が生産終了となると修理することができなくなる場合があります。そして、製品は進化するため、旧商品となったものの部品は生産終了となります。このようなことは高級腕時計ブランドでも起きることであり、製造から数十年経過したモデルは、メーカー修理が行うことができないという事例も存在します。それに対してパテックフィリップは、古い年式の腕時計でも修理可能であることから、永久メンテナンスを行っている言われています。そのため、1つの腕時計を自分から子供、子供から孫と世代を超えて引き継ぐことが可能。家宝のように1つの腕時計を語り継ぐ事ができる体制が整えられているといえます。また、パテックフィリップの腕時計の一つ一つには台帳が存在。内容を綴ったアーカイブを発行することが可能で、「いつ購入されたものか」ということを確認することもできるのです。

3.史上最高額腕時計の常連

海外の有名オークション会場で、パテックフィリップは腕時計の史上最高額を何度も更新しています。2002年には当時の日本円レートで約4億8000万円で落札されたパテックフィリップのワールドタイム(1949年製)が史上最高額として話題となりました。そして、2017年には日本円換算12億円のパテックフィリップ(1941年製)が史上最高額となっています。

パテックフィリップのラインナップ

パテックフィリップの主なモデルは、シンプルな2針もしくは3針のモデル、複雑機構を搭載するコンプリケーションモデル、そしてスポーツモデルの3つに分類できます。

1.シンプルなモデル

カラトラバ

カラトラバは丸型のシンプルなデザインで構成されたシリーズです。カラトラバには世代に関係なく様々なデザインが存在し、多くのモデルが展開されています。基本的にイエローゴールド、ローズゴールド、ホワイトゴールドのケース素材が用意されていますが、一部の上級モデルにはプラチナの設定も存在。また、限定生産でステンレスモデルが発売されたこともあります。ストラップは革ベルトが基本ですが、一部モデルにはブレスレットタイプも存在します。機械は、手巻き、自動巻、自動巻(薄型)、クオーツとなっており、男性用と女性用が用意されています。文字盤の色は白、もしくはそれに近い色が多く、黒文字盤は少ない傾向があります。有名なモデルは「96」というリファレンスを持つモデルで、通称「クンロク」として時計愛好家に親しまれています。96は戦前から1980年代頃までに製造されたモデルで、オールドパテックと言われる年式にあたります。

ゴールデンエリプス

ゴールデンエリプスは、独自コンセプトのモデルとして1968年にデビューしました。ケースのデザインは、黄金比率といわれる数式に基づいたもので、角型でも丸型でもない形状となっています。2針のシンプルなモデルが代表的ですが、かつてはデイト表示やスモールセコンド付きのモデルもラインナップされていました。ケース形状は手巻きモデルが縦31mm、自動巻モデルが縦35mm、2008年に発表されたプラチナモデルが縦38mmとなっています。青文字盤の文字版プレートはK18で形成されており、他のモデルとは異なる特別な仕様となっています。

ゴンドーロ

ゴンドーロは、角型ケースが主なラインナップとなっています。名前の由来は、1920年代にブラジル向けに造られたモデルであり、2007年に登場したクロノメトロゴンドーロは、その復刻版ともいえる存在です。ケース素材は、イエローゴールド、ローズゴールド、ホワイトゴールド、プラチナが用意されています。

2.複雑機構搭載モデル

コンプリケーション

コンプリケーションモデルは、年次カレンダーやワールドタイムなどの機構が搭載されたモデル群であり、様々な機構やデザインが用意されています。上級モデルの「グランドコンプリケーション」と名称が似ているため、日本では「プチコンプリケーション」という通称が存在。コンプリケーションは、製造工程やメンテナンスの難易度がグランドコンプリケーションよりシンプルで、複雑時計の良さと日常使いできる便利さを兼ね備えています。ケース素材は、イエローゴールド、ローズゴールド、ホワイトゴールド、プラチナが用意されており、ステンレスモデルも存在します。

グランドコンプリケーション

グランドコンプリケーションは、複雑機構を搭載するモデルから成り立っており、1000万円を超えるモノも珍しくありません。他のブランドでも、1000万円クラスのラインナップとなっている、永久カレンダー、トゥールビヨン、ミニッツリピーターなどがグランドコンプリケーションのラインナップに存在しています。永久カレンダーは、2月末も自動で調整する機能を有しており、機械の機構も年次カレンダーとは異なります。機械にはデリケートな面があり、扱いを間違えると修理が必要となる可能性もあります。また、その修理には日本国内では対応できず、スイス送りとなる場合も存在。パテックフィリップの価格帯として最も高いグランドコンプリケーションですが、その価格の高さだけでなく「扱いにも慣れが必要」という敷居の高さを有するキャラクター性を秘めています。

3.スポーツモデル

ノーチラス

ノーチラスはパテックフィリップ初のスポーツ系モデルとして1976年にデビュー。著名な腕時計デザイナーであるジェラルドジェンタ氏がデザインを担当しています。左右に「耳」のような部分があるデザインが特徴的ですが、これはケースの構造に由来するもの。2006年モデルからは、この「耳」を必要としないケース構造になりましたが、デザイン遺産として残っています。「K18ゴールドと革ベルト」の構成が多いパテックフィリップにおいて、デビュー当時から「ステンレスとブレスレット」という内容をメインとするモデルです。防水性能は120mとなっており、他のパテックフィリップより高い水準となっています。デビューから2004年までは2針もしくは3針のシンプルなモデルが基本でしたが、2005年からはコンプリケーションモデルもラインナップしています。ケース素材は、ステンレスがメインですがイエローゴールド(2004年まで)、ローズゴールド、コンビが展開。プラチナモデルも存在しますが、限定モデルであったり、一般販売されないモデルであるなど特殊性を秘めたモデルとなっています。

アクアノート

アクアノートはノーチラスをよりカジュアルにしたキャラクターとなっているモデルで、1997年にデビューしました。文字盤周囲は、ノーチラスと同じく八角形の形状となっており、関連性を感じさせるデザインとなっています。パテックフィリップとしては初のラバーベルト装着モデルで、ノーチラスと同じく120mの防水性能を誇ります。文字盤デザインは、ラバーベルトと似た形状となっており、大きな特徴となっています。デビューから2010年までは、3針が主なラインナップでしたが、2011年には「トラベルタイム」が登場しています。ストラップは、ラバーベルトとブレスレットが用意されていますが、初期のモデルには革ベルトモデルもラインナップされていました。

4.その他

ネプチューン

ネプチューンは90年代頃に存在したブレスレットを基本とするモデルです。「ステンレスのケース素材とブレスレット」という組み合わせは、スポーツ系のモデルに用意される傾向がありますが、そのような内容をドレス系のモデルに展開したのがネプチューンです。ケース素材は、ステンレスだけでなく、コンビやイエローゴールドも存在し、男性用と女性用が用意されていました。2018年現在において、既に廃止モデルとなっています。

スカルプチャー

ネプチューンと同様、「ステンレス+ブレスレット」のドレスウォッチというコンセプトの腕時計です。スカルプチャーとは「彫刻」を意味する言葉ですが、そのとおり凝った形状のブレスレットや竜頭が特徴的なデザインとなっています。

パテックフィリップの選び方

様々なモデルをラインナップするパテックフィリップは、シンプルなモデルから複雑機構を搭載したモデルまで幅広く展開。ただし、それらモデルはいずれも高価な価格帯に位置し、人気のあるモデルを選択する場合、中古でも百万円単位の予算を覚悟したほうがよいでしょう。

シンプルなモデルについて

カラトラバなどシンプルなドレス系のモデルは、フォーマルな場に適しているデザインで、ビジネスから冠婚葬祭まで幅広く使用可能です。優れた着け心地を実現しているモデルが多く、特に薄型ケースのモデルは「時計を装着していることを意識させない」というぐらい楽に装着できるという印象があります。ただし、高温多湿な日本の夏では革ベルトは使いづらく、カラトラバは防水性能もそれほど高くないため、日常的に使うには汗も気になります。そのため、ブレスレットタイプの腕時計と併用するといった使い方が良いでしょう。現行モデルは、手巻きモデルと2タイプの自動巻が用意されていますが、「裏スケ」仕様は自動巻モデルの展開が主。裏蓋から機械を眺めたい場合は基本的に自動巻モデルを選択する必要があります。

スポーツ系のモデル

防水+ブレスレット(もしくはラバーベルト)という構成のスポーツタイプは、季節を問わず1年中使えるという便利さを秘めています。ただし、革ベルトやラバーベルトモデルと比較するとブレスレットのつけ心地はやや劣る印象もあります。ノーチラスは2000年代半ばからパテックフィリップを代表するほどの人気となりましたが、かつては「少し変わったパテックフィリップ」という印象の時期もありました。そして、そのような時期において「(数多くのパテックフィリップを持つ人が)リゾート地などで使う娯楽用」とも言われていました。人によって使い方は異なるでしょうが、他の時計と併用することを前提としたキャラクター性が意外にも存在しています。1年中使えるため、メインで使うことも可能でしょうが、カラトラバなど他のパテックフィリップと同時に所有することで意外なマリアージュに気づくかもしれません。

コンプリケーション

コンプリケーションモデルは、パテックフィリップの高い品質と技術力を味わえる存在として、濃いキャラクター性を持っています。キャラクター的にも価格的な面でも、複数の腕時計をコレクションの1つとして、とても良い選択肢となるでしょう。

まとめ

シンプル系、スポーツ系、コンプリケーションという主なラインナップを考えてみましたが、最も使用頻度高く使用可能なのはシンプル系のモデルという印象です。よって、高い実用性を重視する場合、シンプルなドレス系モデルの選択が良いといえます。スポーツ系のモデルは、時計の内容的には実用性が高いですが、他の時計と併用するといったキャラクター性も秘めています。高い人気を有するスポーツ系のモデルは、使い勝手などを考慮するよりも「これが欲しい」という直感に従って買うといった選択が良いと思います。また、コンプリケーションもスポーツ系と同様で、気に入ったモデルを買うという選び方が良いでしょう。ただ、年次カレンダーは2月末以外は自動でカレンダー調整が可能という便利な機能を搭載しているため、ビジネス用の日常用途として良いパートナーとなるかもしれません。

年式の特徴

パテックフィリップは主に3つの年代に分類することが可能です。ここでは代表的なモデルであるカラトラバの「96」シリーズを例にしたいと思います。

1.現行世代(5196)

現行モデルである5196がデビューしたのは2004年で、この2000年代半ばという時期に数多くのモデルが世代交代しました。例えば、ノーチラスは1982年から3800系が現行モデルとして長らく君臨していましたが、2006年に世代交代。以降は5711系がメインモデルとなっています。

現行世代の主な特徴

  • ケースサイズが大型化
  • ステンレスモデルの増加
  • ノーチラスやアクアノートといったスポーツ系にコンプリケーションが追加された
  • 2. 3796世代

    1つ前の世代に相当するのが3796世代です。3796のデビューは1982年であるため、1980年代から2000年代前半までのモデルがこの世代にあたります。ケースサイズは、男性用が33mmから35mmがメインであり、現行世代より小さい傾向です。コンプリケーション(通称プチコン)の登場は、この世代からでありそれ以前の複雑機構搭載モデルはグランドコンプリケーションが基本でした。コンプリケーションの登場は90年代頃ですが、それ以前のラインナップにおいて複雑モデルは少なく、パテックフィリップの歴史的にも特に少ない時期だったといえるでしょう。

    3796世代の主な特徴

  • ステンレスモデルが少ない
  • シンプルなモデルのラインナップが多い
  • 3796は約31mm
  • 3. 96世代

    この世代のパテックフィリップは「オールドパテック」と呼ばれる年式です。カラトラバの96が登場したのは1932年ですが、1970年頃まで生産されました。96の製造中止後、3796が登場するまで10年ほどの空白期間が存在。また、戦前から1970年代までが対象となり、カバーの対象が広く、多少のアバウトさがある分類といえるかもしれません。しかし、「高価なレアモデル」が多いという観点では戦前モデルから1970年代までが同じキャラクターといえます。ですから、3796以前の時代という分類が分かりやすいといえるでしょう。

    96世代の特徴

  • グランドコンプリケーションが多数存在
  • オークション史上最高値のモデルがこの年式に含まれる
  • 96は約30mm
  • 3796世代よりサイズが大きい傾向あり(初代ノーチラスは3800系より大きい)
  • 「トロピカル」と呼ばれるレアカラトラバもこの世代
  • パテックフィリップの価格帯

    パテックフィリップの代表的なモデルは、現在以下のような中古価格帯となっています。

    カラトラバ

    ¥633,600〜¥16,607,000(2024年11月21日現在)>>中古腕時計を見る

     
    アクアノート

    ¥3,580,000〜¥23,980,000(2024年11月21日現在)>>中古腕時計を見る

     
    ノーチラス

    ¥2,480,000〜¥98,780,000(2024年11月21日現在)>>中古腕時計を見る

     
    コンプリケーション(年次カレンダー)

    ¥3,444,000〜¥12,360,000(2024年11月20日現在)>>中古腕時計を見る

     
    コンプリケーション(ワールドタイム)

    ¥4,487,850〜¥23,226,500(2024年11月21日現在)>>中古腕時計を見る
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