90年代後半の段階から「プレミア価格」の代名詞といえば、デイトナであり、その筆頭となっているのが4桁リファレンスの「アンティーク」と呼ばれるモデルです。
そして、その中でも特に高いのが6263という存在であり、ポールニューマンだけでなく、全体的に高い水準となっています。
しかし、当サイトでは6263をこれまで取り上げたことはなく、その様子をお伝えするのは今回が初めてであるのです。
なぜ、今まで6263を取り上げてこなかったかというと、それは6263の相場をお伝えするのが困難だったからです。
価格の幅が広く、条件も異なる6263。また、その特殊さから店舗での取扱も少ない傾向があり、ネットでの販売などよりも、海外の美術品オークションでの取引が主という印象すらあります。
そして、ネットオークションでは、相場と離れた価格で売られる個人出品の個体が存在し、その一部には「ガッチャ」と呼ばれるものが混在します。
「ガッチャ」とはパーツを寄せ集めて作られた個体を指すのですが、4桁リファレンスのデイトナに特に存在する傾向があります。「ガッチャ」がネットオークションに出現したのは2000年代前半のことですが、現在4桁デイトナは「ガッチャ」でも百万円単位となっている様子。「ガッチャ」は本物のパーツで構成されていても、決して本物ではないため、本物より安いのは言うまでもありません。そして、中には「ガッチャ」であるか否かの記載が曖昧で、安く売られる4桁デイトナが存在するのです。
ですから、4桁リファレンスのデイトナの価格は、特に法人の値付けを観る必要性が高いのですが、法人とはかけ離れた個人出品の個体があるため、相場の判定が難しいのです。
6263の値動きについて
通常、「アンティーク」と呼ばれる世代のロレックスは、同じ条件の個体を比較することが重要ですが、今回はその限りではありません。
過去価格の個体は、日本ロレックスOH明細書ありですが、現在ロレックスの明細書が付属する個体はありません。
日本ロレックス明細書ありのほうが、要素としては“高く”なるため、今回は比較可能という判断にいたりました。現在、6263は過去価格よりずいぶん値上がりしている状況ですが、安い過去価格の個体のほうが条件的には良いのです。仮に日本ロレックス明細書ありの個体があったとしたら、明細書なしの個体より高い価格となる可能性があるため、値上がり額はさらに大きな数値となるでしょう。
もちろん、過去価格は法人が提示した価格となっており、相場とかけ離れる値ではありません。
6263の現在価格について
現在法人が販売する6263は、1200万円台から1700万円台まであり、ボトムとトップ価格では約500万円の価格差がある状況です。
4桁リファレンスのデイトナは、ボトム価格との比較を行おうとしても、ボトム価格自体の水準が不安定な傾向があるため、これまで比較は難しかったのです。特に6263など過去と比較して大幅な値動きとなっている場合は、より困難といえます。
現在、6263はどれもが1000万円以上となっている様子ですが、単に1000万円台となっただけではなく、ネット上でも1000万円以上の個体がこの数ヶ月間で売れている様子があるのです。
かつては、このような価格帯の時計がネットで購入されるということは稀だといえましたが、今においてはネットで購入されており、2000万円台の個体まで購入された形跡があります。
9年間で6263が値動きした額
2009年9月において、法人が販売する6263は、日本ロレックス明細書ありという条件で約261万円という水準でした。
4桁リファレンスのデイトナは、1999年の段階から「ずいぶん高い」と言われましたが、1999年の価格は、“ポールニューマン、YG、6264”という条件でも約373万円でした。
ちなみに、1999年7月号のブルータスは、そのデイトナの価格を「高い」と判断していたといえ、「海外では約186万円という評価」という趣旨が記載されていました。
ポールニューマンといえば、高いデイトナの代名詞ですが、そのYG版ですら約373万円だったのです。これは今の水準としては明らかに「安い」といえる価格です。
4桁デイトナの全体像
「ポールニューマン」など4桁リファレンス特有の要素がありますが、その全体像は意外と把握しづらいため、ここで一旦整理したいと思います。
ポールニューマンとは
まず、「ポールニューマン」とは、4桁リファレンスの文字盤デザインとして存在するエキゾチックダイヤルのことを指します。
このエキゾチックダイヤルは、1960年代から存在し、6262、6264、6263、6265に存在。
1999年の段階から、通常文字盤よりかなり高い傾向があります。
リファレンスと世代
4桁リファレンスの主なリファレンスとして、上で挙げた6262など4つが存在しますが、それらは世代が異なります。
当時のデイトナには、黒いプラスティックベゼルと銀色のステンレスベゼルのモデルが同時に売られており、1つの世代において複数のSSモデルが存在していたのです。
1960年代に現行だった世代
1970年から1980年代後半まで現行だった世代
となっており、“プラスティックベゼル”という要素が高い傾向です。
エキゾチックダイヤルはそれら全てに存在しますが、最も高くなる要素といえます。
これまでの相場変遷
1999年の段階から、それ以前と比較して「高い」水準となっていた4桁リファレンスのデイトナですが、当時からエキゾチックダイヤルが高かった様子です。
しかし、その後も4桁デイトナは年々高くなり、かつて「高い」と思われた価格が「安い」というようになっています。
ポールニューマンはその当時高いと言われましたが、YGですら約373万円だったため、SSはそれより安い水準だったといえます。
それがその後、ポールニューマンは500万円台、700万円台といったように値上がりし、1000万円近い水準となっていったのです。
その一方で、ポールニューマンでない4桁デイトナは6263といえども1000万円近い水準とはならず、2009年の段階でも200万円台で購入可能だったのです。
現在の様子について
いままで4桁リファレンスのデイトナは、価格のばらつきが激しく、感覚としては「高い」と感じても、過去価格と現在価格を比較するということは困難でした。
けれども現在、6263については1000万円以上で購入する人が複数おり、店頭価格についても1000万円以上の個体しか無いことから、6263は1000万円以上になっていると判断することが可能である状況です。
そしてそれは、過去価格と比較して約993万円高くなったといえる状況であるということになるのです。
本記事で参考とした中古腕時計
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本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2009年9月 の安値(ヤフオク) |
2018年9月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
ロレックス
デイトナ 黒文字盤 6263 |
中古 | 9年 0ヶ月 |
¥2,614,500 | ¥12,546,000 | 9,931,500 | 479.86% |
2017年からノーチラスの値動きが目立っており、最近は値動きする時計はノーチラスという印象が強いように感じます。
それに対して、デイトナはノーチラスほど派手な値動きでないという感覚もあるように思いますが、この6263の事例を見ると、やはりデイトナは凄いという印象になります。
ポールニューマンと呼ばれるエキゾチックダイヤルに関しては、この6263よりさらに高い水準だと推測できますが、現在売り出されている個体がネットでは確認できないため、どのぐらいの水準なのかは判断できない状況です。
ポールニューマンは、通常の高級腕時計とは異なる取引が多いという傾向があり、この通常文字盤の6263よりもさらに相場を判定するのが難しい傾向があります。
ちなみに、近ごろノーチラスの初代モデルである3700/1も1000万円以上という傾向になってきている模様で、過去価格と現在価格がこの記事の6263と同様の動きをしているといえる状況です。
ただし、4桁デイトナの場合、1999年の段階から同じ6263でもポールニューマンのほうが高く、それは今でも変わっていないと思われます。ですから、6263の場合、通常文字盤の値動きはノーチラス3700/1と同水準でも、それより凄いポールニューマンという存在があるため、ノーチラスに負けていないといえるでしょう。
ですから、ノーチラスの値動きが目立つ今においても、4桁デイトナの凄さは変わらない印象だと感じます。