例えば、ヨーロッパ車のモデルチェンジスパンがおおよそ8年であるように、腕時計にもおおよそのモデルチェンジスパンが存在します。
モデルチェンジの頻度は、ブランドによって異なり、ロレックスやパテックフィリップは長め、オメガやタグホイヤーは短めといった傾向があります。
ロレックスは、4桁時代がおおよそ30年、5桁がおおよそ20年といった様子。パテックフィリップの場合、カラトラバ96は約39年、ノーチラス3800/1Aは23年程度の期間に渡って現行モデルとしてラインナップされていました。
それに対してオメガの場合、5年程度でモデルチェンジされることもあるわけで、「ロレックスと同じ世代のモデルはどれか?」と考えた場合、その対象となるモノが複数存在するということになるわけです。
しかし、そんなオメガにおいて、逆に超長期間に渡ってモデルチェンジを行わないモデルが存在。
それこそが、「ムーンウォッチ」として有名なスピードマスタープロフェッショナルであるのですが、5thと呼ばれる5世代モデル及び6thモデルは、いずれもロレックスやパテックフィリップを凌ぐほどの長寿モデルだといえます。
さらに、スピードマスターの場合、5thと6thの違いがわかりづらく、5th登場初期の60年代後半モデルと、現在新品で売られている現行モデルとの差は、見た目的にはそこまで違うとは感じません。そういった意味では、5th登場の1960年代後半から、50年程度に渡って大きく見た目が変わっていないわけで、カラトラバ96もびっくりな超長寿モデルという側面があるのです。
ただ、この「現行モデルと大きく変わらない」ということは、古いモデルの「らしさ」を感じさせないということに作用してしまうようで、ヴィンテージなムーンウォッチがあまり評価されていないという傾向になってしまっているわけです。
ロレックスの場合、60年代後半のモデルは「アンティーク」として、以前から高値傾向がありますが、同じ時代のスピードマスターが評価されていないのは意外と感じます。
もちろん、5thスピードマスターにおいて、評価されているものが無いわけではなく、個体によっては200万円台となるものもあります。
しかし、年式による評価はあまりないといえるわけで、それは現在の145.022の水準を見ると分かります。
145.022こそ、まさに60年代後半にデビューした5thモデルであるのですが、このスピードマスターの現在ボトム価格は40万円といったところ。
もちろん、第6世代の3570.50より高い水準であるものの、ロレックスほど世代間における価格差はないといえます。
そして、それは2009年時点の相場でも同様で、当時10万円台前半だった3570.50に対して、数万円高いぐらいという程度。
もちろん、その時代と比べて3570.50が値上がりしたのと同じように、この145.022も現在にかけて値上がりしているわけですが、もう少しヴィンテージらしい評価がされても良い気もします。
本記事で参考とした中古腕時計
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本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2009年12月 の安値(ヤフオク) |
2019年11月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
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オメガ
スピードマスター 145.022 |
中古 | 9年 11ヶ月 |
¥177,000 | ¥400,000 | 223,000 | 225.99% |
現在売られている145.022には、様々な条件がありますが、このボトム価格の個体には新しいブレスレットが装着されている模様です。
5thと6thを見分けるわかりやすい要素として、旧タイプのブレスレットという点があるため、新しめのブレスレットが装着されているこの個体は他と比べると安めだといえます。
しかし、極端に安いわけではなく、旧型ブレスレットの個体との価格差は5万円未満といったところ。
また、1970年前後に製造された個体でも、その価格帯は50万円台という水準で購入可能です。
「70年代頃のムーンウォッチ」というと、4桁ロレックスのように「なんだか高そう」と思うところですが、実は安く買おうと思えば、40万円台、50万円台という水準でも手に入るのです。
もちろん、145.022には条件によって200万円台という個体がありますが、その一方で、古めの年式でも50万円台という水準で購入可能な個体があります。
ですから、今のところ5thは「年式が古い」ということだけによる評価はあまりないといえるのです。
スピードマスタープロフェッショナルは、ロレックスデイトナとも比較されるほどの有名モデルですが、そのクラシカルモデルが意外とそこまで評価されていないというのは興味深い現象だと思います。