90年代カラトラバといえば、33mmといったサイズが一般的で、今の基準と比べると随分小さいという印象があります。
ただ、この5032に関しては、36mmというケースサイズ。当時のカラトラバ基準からするとかなり大きなサイズだったことになり、異色なモデルだったといえます。
そういった“異色さ”は、ケースサイズにとどまらず、デザイン面や搭載ムーブメントからも感じ取ることができます。ケースデザインは、クロノグラフの5070を彷彿させますし、採用されているムーブメントも315系ではなく、キャリバー240。
240といえば、薄型ムーブメントですが、一見すると「薄型」に見えないこの5032に採用されているのが面白いと感じます。
薄型に見えないというのは、正面から見た印象で、立体的なケースデザインがそういったことを思わせるのですが、ケースの厚みも約7mmということから、キャリバー240搭載のシンプル系モデルとしてはそこまで薄いわけでもありません。
そのため、なぜ315系ではなく240なのかわからないところですが、315系はセンターセコンドであるため、2針仕様にするために240を採用したのかもしれません。
ですから、この5032には、
という点が面白いと感じ、尖ったカラトラバであると思うわけです。
ただ、5032Jは、数あるカラトラバの中の1つという印象で、そういった面白い要素があるということはあまり知られていないと感じます。
それは、中古相場を見ても分かるのですが、2016年夏頃と2019年現在の相場を比べてもその差は約6万円といったところ。
上昇しているため、優秀でないわけではありませんが、尖ったモデルという観点では、もう少し値動きしても良いのではと感じます。
本記事で参考とした中古腕時計
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2016年8月 の安値(楽天) |
2019年12月 の安値(ヤフーショッピング) |
変動額 | 残価率 |
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ロパテックフィリップ
カラトラバ 5032J-010 |
中古 | 3年 4ヶ月 |
¥1,382,400 | ¥1,450,460 | 68,060 | 104.92% |
5032Jの魅力は、これまで述べたところ以外にもあるといえますが、それはなにかというと、カラトラバらしい文字盤だと思います。
ドルフィン針とバーインデックスの形状は、96系のようであり、まさにザ・カラトラバ。そういったオーソドックスさが、36mmという大きなケースサイズ、及び5070のようなケースデザインと相まって絶妙なバランスを形成していると感じます。
また、文字盤の下部にはシグママークが存在するのですが、今となってはシグママークはヴィンテージな要素だといえるでしょう。ケースデザインの印象はどことなく近代的な印象があるため、それもまた「甘さと辛さ」といったように相反する要素の融合のように魅力的だと思います。