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現在相場考察

最後の高級ラインとしてのラジオミール、パネライPAM00190

2020年4月14日更新
オフィチーネパネライのラジオミールPAM00190について斉藤由貴生が執筆。本記事では2017年10月の安値と2020年4月の安値を比較し現在相場を考察。この2年6ヶ月での変動は20万3100円の値下がりだった。

ラジオミール PAM00190についての考察(2020年4月)

2004年に登場したPAM00190というモデルは、高級時代最後のラジオミールだといえます。

ムーブメントはジャガールクルトベースとなっており、8日間パワーリザーブという内容。8DAYSといえば、現代のパネライにおいては“特に珍しくない”要素ですが、この190番のそれは、現行世代とは似ているようで似ていないといった側面があるのです。

190番にはそういったことを思わせる2つの点があるのですが、1つが時代背景。もう1つがパワーリザーブインジケーターの存在です。

まず、時代背景として、この190番が出た時代、パネライに「8 DAYS」はこのモデルぐらいしかなく、素材バリエーションが多少あったぐらい。また、他のブランドの腕時計についても、このような長期間パワーリザーブのモデルは少なく、“超”がつく高級品という印象がありました。

ですから、この190番は、それまでに存在した高級ラジオミールの延長線上に位置した特別感のあるモデルだったわけです。

そして、パワーリザーブインジケーターという要素についてですが、この190番のインジケーターの位置は少し変わっているのです。

文字盤側を見ると、「インジケーターが存在しない」と思ってしまいますが、実は裏蓋側にインジケーターが存在。裏スケ仕様によってムーブメントを眺めることができるわけですが、そのムーブメント側にインジケーターがあるのです。

自社製ムーブメント以降の8 DAYSの場合、インジケーターが無い場合もありますし、あったとしても文字盤側が多数派。ムーブメント側にインジケーターがついているモノもありますが、396番はトゥールビヨンというこれまた特殊なモデルで、6日間パワーリザーブです。

もちろん、現行世代の8DAYSパワーリザーブインジケーターも、他のブランドに対して独特な動き方をするため、個性がないわけではありません。しかし、高級機種に限って採用されているわけではないため、高級世代のラジオミールと比べると特別感は薄いといえます。

さて、そんなPAM00190ですが、そういった個性から、これまでの評価はSSラジオミールとしては高い中古相場だったといえ、時期によってはRGのPAM00103に匹敵するほどの価格帯となっていたのです。

そのような相場だったのはいつかというと、2017年10月なのですが、当時103番が105万円程度だったのに対し、この190番は約97万円という水準。RGとの価格差が大きくなかったのです。

そんな190番は、2017年以降売出し数が減り、近頃は2017年よりも値上がりしているのでは、と感じる水準になっていたといえます。

しかし今、そんな190番はなんと値下がり状態。

現在、PAM00190約77万円で購入可能なのですが、これは2017年10月よりも20万円ほど安い水準なのです。

本記事で参考とした中古腕時計

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パネライ PANERAI ラジオミール8デイズ PAM00190 中古 メンズ 腕時計

本記事の価格比較

腕時計 状態 期間 2017年10月
の安値
2020年4月
の安値
変動額 残価率
オフィチーネパネライ
ラジオミール
PAM00190
中古 2年
6ヶ月
¥977,100 ¥774,000 -203,100 79.21%

パネライは、97年にリシュモングループ入りしましたが、それから2004年ぐらいまでの時代においてラジオミール高級ラインといった位置づけでした。

そして、2005年にルミノールベースが登場して以降、高級ラインといった位置づけではなくなり、それまでとは異なる印象となります。もちろん、2005年以降も“高級なラジオミール”は存在しますが、ラジオミール自体の位置づけはルミノールと同様となっています。ルミノールにもRGモデルなどの高級モデルが存在しますが、それと同様といったところです。

ですから、ラジオミールには、「高級か否か」という2つの世代が存在するといえるのですが、実はもう1つ、世代があるといえるのです。

それこそが、この190番に代表されるJLC搭載ムーブメント世代。2003年頃まで、ラジオミールにはゼニスエリートや、フレデリックピゲ(限定モデル等)が搭載されており、デットストックムーブメント搭載の限定モデルもありました。

それが、2004年ぐらいから、そういった限定モデルが少なくなり、以前よりもやや華やかさが弱まったという傾向があるように感じます。

というよりも、それまでのドレス系といった高級感から、ムーブメント側に振った高級演出となったため、華やかというイメージでなくなったのは当たり前ともいえます。

ですから、当時の印象として、190番世代ぐらいから、「ラジオミールは変わりつつある」と感じたわけですが、2005年から脱高級ラインとなったため、結果的に2004年世代が最後の高級ラインとしてのラジオミールとなったといえます。

この記事の執筆者
斉藤由貴生
腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。
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