一見、ノーチラスに見えてしまう雰囲気の5060SJ。ただ、ケースを見ると、そこにはノーチラス特有の「耳」がなく、形状はまさにアクアノートといったところです。
また、「ノーチラスに見える」といっても、その雰囲気は97年頃の黒文字盤ノーチラスであり、初代及び現行のノーチラスとは異なるデザインとなっています。
ではいったいこのモデル、ノーチラスかアクアノートか、どちらなのでしょう。
WEBを調べると「アクアノート」表記が多いですが、「ノーチラス」も少数見られます。それら配分からすると、どうやら答えは「アクアノート」となりそうですが、実は違うのです。
なぜならこの5060SJのデビューは1996年。(ちなみにその頃は「5060/SJ」)アクアノートのデビューは1997年であります。
ですから、このモデルはノーチラス。公式資料にもノーチラスとして分類されている形跡があります。
しかし、筆者としては、97年のアクアノート初期世代において、5060SJはアクアノートのYGバージョンという扱いだった資料を見た記憶があります。また、5060SJという型番は、まさに5060Aの素材違いモデルといえるわけです。
また、2000年頃のモデルとなると、アクアノートとして売られていた形跡もあります。
このことからいえるのは、この5060SJというモデルは「ノーチラスでもアクアノートでもある」ということでしょう。
実際、このモデルの立ち位置は96年のデビューからどんどん変わっているといえ、カメレオンのように変化した形跡があるといえます。
96年の段階では「ノーチラスの亜種」といった扱いだったのが、97年のアクアノートデビュー時ではアクアノートの豪華YGモデルといったポジション。そして、98年にYGモデルのアクアノートが5065/1Jなどに一新されると、このモデルは「アクアノートの亜種」といった感じになったといえるわけであります。
アクアノートにしても、5711世代より前のノーチラスにしても革ベルトモデルはこのモデルぐらいしかないわけで、5060SJは何かとイレギュラー感の強いモデルだといえますが、単に「J」ではなく「SJ」というリファレンス末尾からもそういった印象を強く感じます。まして、初期型はブレスレットでないにも関わらず「/SJ」だったわけで、より異例だといえます。
ちなみに、初期モデルでは裏蓋が「裏スケ」ではなかったのに対し、後期モデルでは「裏スケ」。パテックフィリップは、98年頃にデイトのフォントを明朝⇒ゴシックにしましたが、ゴシック表記の個体は大体が裏スケといったところです。
さて、この5060SJ、筆者が初めてアクアノートを購入した20年近く前から、イレギュラーなモデルという認識だったのですが、その頃の価格帯はおおよそ5065/1Aよりも少し高いといったところだったといえます。
そういった価格帯は、2008年の段階でも同様で、当時のアクアノートSSブレスレットと同じかやや高いといった相場だと感じます。
本記事で参考とした中古腕時計
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2008年4月 の安値 |
2020年5月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
パテックフィリップ
アクアノート 黒文字盤 5060SJ |
中古 | 12年 1ヶ月 |
¥1,398,000 | ¥3,090,000 | 1,692,000 | 221.03% |
この5060SJには、黒文字盤とアイボリー文字盤がありますが、ここ数年の中古は黒文字盤が圧倒的に多い傾向です。
相場については、現在309万円という水準ですが、これは同世代のアクアノートと比較すると、5066/1Aよりも高く、5065/1Aよりも安いといったところでしょう。
2008年4月といえば、リーマンショック前の時代で、全体的に腕時計が高いと感じる時代でした。この5060SJも2000年代前半には90万円程度だったわけですが、2008年4月には140万円近い水準となっていたわけで、当時の感覚としては高くなったと感じたわけです。
しかし、今となっては2008年4月水準と比べても160万円以上高くなっているわけで、改めて時代は変わったと感じる変遷だと思います。