近年、限定モデルが評価される傾向があるオメガの腕時計。他のブランドの場合、「限定モデル」という要素はそれほど評価されることがないと感じますが、オメガの場合は目立って評価されているといえます。
実際、値動きの激しさでも、価格自体の高さでも、目立っていると感じるのは限定モデル。スピードマスターのアラスカプロジェクトや、スヌーピーなどがそういったものに該当します。
そして、このムーンフェイズ3575.30もまた、評価されるモデルの1つであるのですが、このモデルはどういった限定かというと「ヨーロッパ限定」であります。
この世代のムーンフェイズは2000年頃に登場し、2007年頃に生産終了になった模様ですが、当時の位置づけとしては、「上級なスピードマスター」といったところ。
同じ時代にデビューしたブロードアローとともに、SSスピードマスターにおける高級品といったポジションを担っていたといえます。
ちなみに、SSといってもムーンフェイズのベゼルはWG。ブロードアローがフレデリックピゲといった高級ムーブメントを使うのに対し、ムーンフェイズは外装パーツに高級要素を取り入れたのです。
さて、日本に導入されたムーンフェイズは白文字盤だったのですが、ヨーロッパには銀文字盤が存在。それがまさにこの3575.30であるわけです。
とはいえ、このモデルが現行だった2000年代において、このヨーロッパ限定は特にレアという印象がなく、並行新品が普通に入手できた状態。また、実勢価格も白文字盤と同様だったのです。
そういったことから、長らくこの銀文字盤は白文字盤と同じような中古相場だったのですが、2017年頃から銀文字盤のほうが高く評価されるように変化しました。
この3575.30は2017年6月の段階で約36万円という水準だったのですが、2018年8月には約55万円にまで上昇しています。
ただ2019年7月には下落傾向となって、40万円台後半という水準になっていました。
そして3575.30は、2020年5月の今、再び値下がり傾向となっており、その水準は約43万円にまで下落。一時期50万円台中盤だったこの銀文字盤は、ついに40万円台前半という様子となっているのです。
本記事で参考とした中古腕時計
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2019年7月 の安値 |
2020年5月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
オメガ
スピードマスター ムーンフェイズ 3575.30 |
中古 | 0年 10ヶ月 |
¥483,840 | ¥437,800 | -46,040 | 90.48% |
この3575.30が目立って下落した、2019年7月と今回の2020年5月という時期には、下落トレンドということが共通しているといえます。
3575.30は、下落トレンド時において“値下がり傾向”となっているため、分かりやすい動きともいえますが、「異例」と感じる点もあるのです。
それは何かというと、他の限定オメガの値動きと違うといったことなのですが、実は現在、限定オメガで下落しているモデルはあまりないのです。
先日お伝えしたスヌーピーに関しては、1年前とほぼ変わっていない様子ですし、アラスカプロジェクトについては、2019年水準よりもやや上昇といったところであるのです。
それに対して、この3575.30は、これまで評価されていた限定モデルでありながら、今回値下がりしているのです。
とはいえこの時計、あくまで筆者の肌感覚ですがコロナによる下落トレンド以前から値下がりの兆しがあったように感じていました。
もしもそれが正しいのであれば、この値下がりは現在の下落トレンドに影響されたものでないということになるわけですが、他の限定オメガのと違うという観点からも、この説明はしっくりくると感じます。