腕時計投資新聞

腕時計の[買う・使う・売る]すべてを楽しむ専門サイト「腕時計投資ドットコム」
現在相場考察

お得感という稀有な状況、ノーチラス3712/1A

2020年7月6日更新
パテックフィリップのノーチラスについて斉藤由貴生が執筆。本記事では2019年1月の安値と2020年7月の安値を比較し現在相場を考察。この1年6ヶ月での変動は¥-800,000だった。

ノーチラス 3712/1Aについての考察(2020年7月)

ノーチラスには3つのレアモデルがありますが、その中で最も有名なのがこの3712/1Aです。

登場したのは2005年ですが、このモデルこそノーチラス初のコンプリケーションモデル。デビュー当初は、「ノーチラスにもコンプリケーションが搭載された」ということに賛否両論あった印象ですが、そんなことをじっくり議論する間もなく、デビュー翌年に生産終了となったため、すぐにレアモデルというキャラクターとなった経緯があります。

そのため、2006年頃の段階で、すでに「レア」という印象で、当時から相対的に高いモデルといったキャラクターがあったといえるでしょう。

この3712/1A以外のレアノーチラスとしては、3711/1G5800/1Aがそれに該当しますが、それらは生産期間が1年というように極端に短いわけではないため、2000年代当時から「レア」と言われていたわけではありません。

ですから、3712/1Aはレアモデルとしての知名度が高く、10年以上前から相対的に高いといった傾向があるわけです。

3712/1Aの見た目は、5712/1Aと似ていますが、両者には大きな差があります。

それこそが、2ピース構造か否かという点なのですが、3712/1Aノーチラス伝統の2ピース構造を採用するため、耳部分が左右並行。その一方、5712/1Aは耳部分がカーブしているのです。

生産期間が短いというだけでなく、伝統の2ピース構造であったり、それが2000年代登場の近代的モデルかつ、コンプリケーションというのがさらにレアという印象となり、世界中のコレクターにとって「グッとくる」内容だといえます。

そういったことから、この3712/1Aは2019年1月の段階で1260万円という水準だったのですが、当時の印象として「さすが3712/1A」といったところだったと思います。

ただ、1000万円以上という水準は、今となってはノーチラスにおいて珍しくありません。

実際、5980/1A5711/1R5726/1Aなどが1000万円級の水準となっていますが、実はそれらがその水準になったのは2019年5月以降のこと。5980/1Aが5月に1000万円以上になったのを皮切りに、5711/1Rが7月、5726/1Aが8月に1000万円以上という水準に達したのです。

ですから、2019年1月時点では1000万円以上ノーチラスは珍しく、3712/1Aは「さすがレアモデル」といったように抜きん出て高い印象があったわけです。

なお、2019年夏以降には、下落トレンドがありましたが、2019年に1000万円以上となったノーチラスについては、ほとんどが今でも1000万円以上という水準をキープしています。

5726/1A-010だけは1000万円を切っている様子ですが、それでも990万円というボトム価格となっています。

以上ように、2019年1月と2020年現在とでは「1000万円級ノーチラスの事情が変わっているわけですが、そのような変化が起きているならば、3712/1Aは従来通り相対的に高くなり、5980/1Aなどを引き離す水準になっていても不思議でないわけです。

とはいうものの、3712/1Aはかなりなレアモデル。その登場頻度は年に一度あるかないかといったところ。

そして今回、2019年1月ぶりに売りに出されている様子があるため、現在水準を確認できる状況となっているのです。

では現在3712/1Aはいったいいくらなのかというと1180万円という水準。

なんと2019年1月水準よりも80万円安い状況となっているのです。

本記事で参考とした中古腕時計

※広告が含まれる場合があります
パテックフィリップ PATEK PHILIPPE ノーチラス 3712/1A-001 中古 メンズ 腕時計

本記事の価格比較

腕時計 状態 期間 2019年1月
の安値
2020年7月
の安値
変動額 残価率
パテックフィリップ
ノーチラス
3712/1A
中古 1年
6ヶ月
¥12,600,000 ¥11,800,000 -800,000 93.65%

3712/1Aの現在水準を見た筆者は、2019年1月水準よりも安くなったということよりも、5980/1Aなどとの価格差が小さくなったことに驚きました。

先のように、この3712/1Aは他のノーチラスと比べてかなり高い水準に位置するというのがこれまでの事例でした。

5980/1Aも2019年1月時点でかなりな評価となっていましたが、それでも1000万円以下3712/1A5980/1A-001の価格差は262万円程度もあったのです。

しかし、今では3712/1A5980/1A-001の価格差は65万円という様子。だいぶ差が縮まっているわけです。

そういったことから、現在の3712/1Aについて感じるのは、「お得」という要素。3712/1Aは、長らく他のノーチラスに対して抜きん出て高い相場となっていたのが常ですが、それが現在水準では「抜きん出て高い」わけではありません

また、2019年1月水準よりも80万円安く購入可能な状況でもあります。

ですから、3712/1A1000万円以上という水準、なおかつ15年近く前から「レアモデル」として有名な存在でありながら、現在お得というかなり稀有な状態となっているのです。

この記事の執筆者
斉藤由貴生
腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。
本コンテンツには、主観的評価、見解、想定における情報が含まれています。運営者及びコンテンツ提供者は、コンテンツ内容の正確性、確実性、完全性における保証を行いません。また、コンテンツ内容にかかわる損害・トラブル等に関する一切の責任を負いません。本サイトに記載されている情報は、特に断り書きがない限り、更新日時点での情報に基づいています。