パシャといえば、サントス、タンクなどとともにカルティエを代表する存在感だといえますが、ここ5年ぐらいの間、事実上のシリーズ廃止状態なのでは、と思えるほどひっそりとした展開となっていました。
実際、ラインナップされていたのはミスパシャのみ。パシャCですら、2016年頃に生産終了となったのです。
しかし、そんなパシャは、なんと今年新作が電撃登場。その内容は、2018年に登場したサントスガルベと同じアプローチで、
といった内容となっています。
これらは、2002年に登場したロードスターのベルト脱着機能であったり、2000年代中盤に登場したデザインと90年代モデルのデザインを程よく組み合わせるような印象があるなど、カルティエが持つ文化資産をうまく活かした内容で、魅力的な腕時計に仕上がっていると感じます。
さて、パシャといえば、2000年代にシリーズ数が多くなったことから全体像がわかりづらくなった経緯がありますが、それと同時にパシャ=女性向けといった印象が強くなったように感じます。
2000年代中盤ラインナップでは、男性用としてパシャシータイマーとパシャ42mmが用意されていたものの、有名モデルであるパシャCが女性向けへとシフトしていったため、「女性用」という印象が強くなってしまったのかもしれません。
けれども今回、新作が登場したことにより、再びパシャは男性用といった印象が強くなりつつあるように感じます。
そうなると、中古相場の印象も変わってくるのかと思われるところですが、現在の様子を見る限り、そのような現象を期待するにはまだ早いといった感覚です。
本記事で参考とした中古腕時計
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2017年5月 の安値 |
2020年8月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
カルティエ
パシャ38mm N950 W3105055 |
中古 | 3年 3ヶ月 |
¥299,160 | ¥289,500 | -9,660 | 96.77% |
このN950は、当時上級モデルだったパシャ38mmのさらに上級な存在として2002年にデビューしました。
通常のSSモデルが白文字盤のところ、N950は黒文字盤。そして、高級要素としてプラチナベゼルが与えられているのです。
これは、当時大ヒットとなっていたヨットマスターロレジウムに影響されたといえますが、「超高級モデルのカジュアル版」の演出としてプラチナベゼルというアイテムはうってつけだったのです。
ですからこのN950には、通常K18モデルでしか採用されない“アプライドインデックス”が採用。
パシャ38mmにはSSxYGコンビモデルもありますが、そちらではインデックスがプリントとなるところ、N950ではアプライドなのです。
そういった高級感や特別感と、黒文字盤人気という2002年当時のトレンド、及びその男性らしい見た目から、このN950はデビュー当初かなり話題性のあるモデルとして人気があったといえます。
実際、2010年頃における中古水準は相対的に高いといった印象。2010年12月水準は約36万円だったのですが、これは、SSブレスレットのクロノグラフと同じぐらいといったところでした。
パシャ38mmの価格序列は基本的に、「3針<グリッド<GMT<クロノグラフ」となるため、N950のGMTがクロノグラフと同水準というのはしっくり価格帯だったといえます。
ちなみに、2010年当時の約36万円という価格帯は、サブマリーナ16613などと同様でした。
しかし現在、このN950のGMTは約28万円(ABランク以上)という中古水準。前回お伝えした2017年5月当時でも「以前の印象よりも安くなった」という感想でしたが、それから3年後の今でもほとんど変わっていない状況です。
なお、クロノグラフのW31030H3は一時20万円台中盤にまで下落したものの、現在では30万円程度に回復している様子があります。
ですから、このN950のGMTモデルは、他のパシャ38mmと比べても、あまり値動きしてないという印象になるのです。