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腕時計特集

『MASTER’Sコラム』時計基礎知識2

2020年8月8日更新

みなさんこんばんは

今年の夏は我慢の夏となりそうですが、コミット銀座では8月に何か素敵な催しが出来ればいいな、なんて考えながら日々運営しております。

さて今回は前回お送りした”時計基礎知識”の第2弾として、もう少し踏み込んだ専門的な知識を書いていきたいと思います。高級時計は様々な機能や機構をもつモデルも多く、実際にこれはなんなの?と思うものが沢山あります。その機能や機構にはそれぞれの実装までに至る背景も存在し、特に男性はそこに惹かれてしまう方も多いです。これから高級時計にチャレンジしてみようと思う方はもちろん。ある程度知識あるよ!という方まで、参考となる文章にしていきますので、是非とも最後までお付き合いください。

GMT機能

GMTとは、”Greenwich Mean Time”の頭文字を取っており、グリニッジ標準時のことを指します。(*イギリスのグリニッジ天文台での平均太陽時のこと。グリニッジ天文台は経度0度にあり、ここを基準として世界各国の標準時を決めている。 日本は経度135度となるため、グリニッジ標準時から9時間差。)

長針と短針による時刻表示の他に、24時間表示が出来、複数のエリアの時間帯を同時に表示できる機能のことをGMT機能といいます。操作の方法は複数ありますが、現在の時間帯=ホームタイムと第2時間帯=ローカルタイムを操作するものが一般的とされています。

代表モデル ロレックス GMTマスターII Ref.126710BLRO

エスケープバルブ

エスケープバルブとは、腕時計内部に侵入したヘリウムガスを外部に排出させるための機能です。ヘリウムガスは分子構造が非常に小さいため、腕時計の内部にも侵入してしまい、浮上する際に膨張し、風防ごと吹き飛ばしてしまうことがあるので、装備されました。ケースサイドに装備されることが多いです。

代表モデル ロレックス シードゥエラー Ref.16600

ムーンフェイズ

ムーンフェイズとは、月齢をダイアル上の小窓に表示させる機能を指します。その歴史は非常に深く古いですが、未だになんの目的であったかは不明とされています。(一説としては、20世紀初頭まで潮の満ち引きなどを知る為の重要な機能といわれていた) 今では、その目的とは関係なく、実際に月が満ち欠けしていく様子がわかるこのデザインは、何とも言えない存在感を放ち、デザインとして確立されています。

代表モデル パテックフィリップ アニュアルカレンダー ムーンフェイズ Ref.5125G-010

パワーリザーブ

パワーリザーブとは、ゼンマイをフルに巻き上げた状態から、それが解けるまでの時間を指します。なかにはパワーリザーブをダイアル上に表示させ、巻き上げ残量を確認できるモデルも存在します。(残量が分かりづらい為、主に手巻き式ではなく自動巻き式に使われる)

代表モデル ランゲ1 – LS1914AD 191.039|A.ランゲ&ゾーネ

ワールドタイム

ワールドタイムとは、世界中の主要都市の時刻を把握できる表示機構を指します。インダイアルやダイアル外周などに都市名が記され、現在の時間帯=ホームタイムとそれぞれの都市の時刻を一つの時計(ダイアル上)で把握することができます。

代表モデル パテックフィリップ Ref.5130/1G

アニュアルカレンダー(年次カレンダー)

アニュアルカレンダー(年次カレンダー)とは、月末が30日(小)と31日(大)の月を自動的に判別することができる機構を指します。(*パテックフィリップが1996年に特許を取得)従来のデイト機能は日付だけをシンプルに表示し、30日で終わる月の末日には調整が必要とされます。一方アニュアルカレンダー(年次カレンダー)では自動的に月の把握が出来るため、調整の必要ない実用性に富んだ複雑機能とされています。ただし、閏年がかかる2月に関しては調整が利かないため、3月1日のみは日付を調整する必要があります。

代表モデル パテックフィリップ Ref.5146G

パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)

パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)とは、先程紹介したアニュアルカレンダー(年次カレンダー)の大の月・小の月までもを自動的に修正して表示することができる機構を指します。暦上では1年は365.425日とされており、それを閏年を制定することで4年に一度誤差を修正しています。パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)はその閏年も調整するこができ、その技術は”最も複雑”ともいわれ、使われるパーツも多く、そもそも作ろうと試みるブランドの方が少ないです。その為、パテックフィリップなど高級時計のなかでも秀でたブランドから生まれることがほとんどです。

代表モデル パテックフィリップ パーペチュアルカレンダー Ref.3940

*参照:sotheby’s

ミニッツリピーター

ミニッツリピーターとは、音で時刻を知らせる機構のこと。アンティークの懐中時計や腕時計に採用される事が多く、そのどれもが高価格帯であります。モデルによって異なる音が奏でられ、その音の美しさに惹き込まれるファンは多いです。

代表モデル パテックフィリップ ミニット リピーター Ref.5078P-001

スプリットセコンドクロノグラフ

スプリットセコンドクロノグラフとは、2つの異なる計測を同時に行えるクロノグラフを指します。非常に複雑で精度が求められるこの機能は、高い技術力が求められます。2本同時に動き出したクロノグラフ秒針は、スプリットボタン(真ん中)を1度押すと1本が止まり、もう一度押すと1本目の止めた針が2本目に追いつくように設計されています。(通常のスタート・ストップは上ボタン/リセットは下ボタン) ラップタイムを計るようなスポーツで使用されることが目的でつくられた機能です。

代表モデル パテックフィリップ Ref.5004

トゥールビヨン

トゥールビヨンとは、機械式時計の一部の内部構造全体を回転させることにより、姿勢差によるズレを修正し、安定した動作(日差)を実現する機構を指します。重力が一方後からかかり続けると、規則的な動きが阻害されるようになりますが、その重力の悪影響を打ち消し、精度を安定させるために有効な機構がトゥールビヨンです。部品の多くが高精度なうえに、高度な技術も求められるため、その制作時間は膨大にかかるとされ、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーターと並び最高難易度の技術と言われております。

代表モデル ブレゲ トゥールビヨン エクストラフラット 5377PT/12/9WU

グランドコンプリケーション

グランドコンプリケーションとは、パーペチュアルカレンダー・ミニッツリピーター・スプリットセコンドクロノグラフ・トゥールビヨンなどの複雑機構を複数搭載したものを指します。グランドコンプリケーションを搭載した機械式時計は、超高価格帯の時計ばかりでなかなか手に出来るモデルではありません。その為、実物を見る事自体が少なく、個体数も比例しています。

代表モデル パテックフィリップ グランドコンプリケーション ミニットリピーター トゥールビヨン パーペチュアルカレンダー 5016P-018

フライバック

フライバックとは、クロノグラフの計測中にリセットボタンを押すと、すべてのクロノグラフ計測針が瞬時にゼロにリセットされ、再計測する機構を指します。何度も続けて計測を行うには非常に便利な機能とされています。

代表モデル ブレゲ タイプXX アエロナバル フライバッククロノグラフ 3800ST

*参照:Christie’s

レトログラード

レトログラードとは、フランス語で「逆行」を意味し、針が扇状に動作し、端まで達すると瞬時に折り返してスタート地点に帰針する機構を指します。時計の基本は円運動とされ、ムーヴメントの内部で歯車が回転し、その動きに合わせて針も円運動を行いますが、その規則性のある動きを、あえて崩すのがレトログラードです。時分針・秒針・カレンダー・曜日などを表示する際に用いられることが多いです。

代表モデル フランクミュラー パーペチュアルカレンダー クロノ ビーレトログラード 18KWG Ref.6850CC QPB

クロワゾネ

クロワゾネとは、「有線七宝」とも表記され、日本においても馴染みのあるエナメル技法を指します。0.7mmという極細の金線を使い、柄を作り、その中にカラフルなエナメルを流して作る非常に手間のかかる技法です。

代表モデル パテックフィリップ ワールドタイム クロワゾネ Ref.5131G

豆知識編

マニュファクチュール

マニュファクチュールとは、時計の製造にかかるすべてを『自社一貫生産』できる体制を持っている時計メーカーを指します。(*自社でムーヴメントを製造するメーカーを指すこともある。)ロレックスやパテックフィリップが代表的とされています。

COSC

COSCとは、スイスにあるクロノメーター検定協会の略称とされます。時計の品質向上を目的に設立され、精度検査やクロノメーターの認定を行う団体です。

まとめ

以上が第二弾となる「時計基礎知識」でしたが、みなさまいかがでしたでしょうか。高級時計には、商品名や説明文だけを見ていると「これは何!?」となる事が多々あります。

せっかく高いお金を支払うのに、高い時計を着けるのに「何もわかってない」なんて寂しいことはあってほしく無いです。

実際、「恥ずかしくて聞きづらい」や「格好つけて聞けなかった」なんて声は沢山聞きます。更には、「説明が全くなかった!!」という声すら聞く事があります。

そんな声を聞くたびに、自分のお店でもそうなっていないか?と身が引き締まる思いになります。ご来店はもちろんですが、電話でもメールでもLINEでも、細かな質問にお答えいたしますので、何か些細な事でもお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

Text By Takuro Koda

この記事の執筆者
金子剛
コミット銀座 鑑定士 (時計鑑定歴15年) 2020年よりエグゼクティブ・アドバイザー就任。 腕時計の知識、相場観には定評があり、特にヴィンテージロレックスのマニア気質が高い。 現在、ヴィンテージロレックスに特化したサイト、CVWD.JPを制作。
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