パネライの最も基本的なモデルといえば、ルミノールベースですが、パネライが日本で「ブーム」となった2002年において“最も人気”というポジションとなっていました。
その際、入手難易度が高いとされたのは、2番や112番ですが、それらはいずれも「黒文字盤の2針」という内容。リファレンスこそ異なるものの、基本的にはプレヴァンドーム時代からあった「2針黒文字盤」と地続きなモデルだといえます。
とはいっても、それらの価格帯は大きく異なるわけで、分かりやすくいうならば古ければ古いほど高いという傾向があります。
ただ、「古い」という要素は、必ずしも「高い」というわけではありません。
発光塗料がトリチウムだった時代のように「本当に古い」モデルはとても評価されますが、10年前といったように「少し古い」ぐらいの年式は評価されません。
そういった「少し古い」ぐらいの年式となると、「新しい」モデルよりも「安い」となるわけですが、特に2014年に登場した560番あたりと比べると「112番のほうが安い」となります。
なぜ560番が高いのかというと、このモデルから自社製ムーブメントが搭載されているからです。
それまでルミノールベースには、ユニタス(ETA)ベースの手巻きムーブメントが搭載されていましたが、560番からは自社製の8日間パワーリザーブムーブメントに変更されたのです。
そういった変化から、定価や新品実勢価格の段階で560番は、それまでのルミノールベースよりも高額だったわけで、「112番や2番のルミノバよりも高い」という価格序列となっていました。
しかし、そんなルミノールベースの価格序列は今、以前とは異なる状態となっている様子があります。
ルミノールベースの相場といえば、相場が全体的に高い時は高く、安い時は安いという傾向が2017年頃まであったのですが、ここ2年ぐらいは、そういった変化がないのです。
今のような相場の場合、これまでの事例を参考にするとルミノールベースは「どれも40万円以上」となっていたはずですが、112番が30万円台後半、2番が40万円台前半という傾向があります。
では560番はどうなっているかというと、こちらは値下がり状態。
2019年5月に約49万円だったのが、今では約42万円という水準。他のルミノールベースと大きく変わらない状況となっているのです。
本記事で参考とした中古腕時計
|
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2019年5月 の安値 |
2020年12月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
オフィチーネパネライ
ルミノールベース PAM00560 |
中古 | 1年 7ヶ月 |
¥498,000 | ¥425,700 | -72,300 | 85.48% |
これまでの価格序列では、『0番が最も安く、112番がその上、2番(ルミノバ)がそれより高く、560番が更に高い』という傾向でした。
それが今では『0番と112番が同じぐらい、2番と560番がやや高い』というように、あまり差が感じられなくなっているといえます。
この560番の現在水準を見て思うのは、「自社製ムーブメント」という要素は、意外と短い期間で新鮮さが失われてしまうのではないかという点です。
パネライやカルティエが、自社製ムーブメントを積極的に取り入れたのが2010年代前半ですが、今の時代において、自社製ムーブメントはあまり珍しくないというような感覚となっているのかもしれません。
ちなみに、2番(トリチウム)やプレヴァンドームの評価は以前と変わらず、同じルミノールベースとは思えないぐらい抜きん出て高い価格帯に位置しています。