雲上ブランドの中で、最も創業年が古いヴァシュロンコンスタンタンですが、スポーツモデルの「オーバーシーズ」については、最も新しい部類だといえます。
ライバルといえば、ノーチラスとロイヤルオークであるわけですが、それらが1970年代に登場している一方で、オーバーシーズの登場は1996年。
これは、1997年に登場したアクアノートと同世代だといえますが、実際2000年前後といった時代には、アクアノートと同じようなキャラクターという印象がありました。
実はその時代、筆者はオーバーシーズを実際に買おうと本気で検討していたのですが、その時の印象として「新しい」ということは好印象だった記憶があります。
そういった意見は筆者に限らず、なんとなく「スポーツモデルは新しいほうが良い」というイメージがあったと感じます。
実際、2001年における新品実勢価格は、ノーチラスよりもアクアノートのほうが高かったわけで、5065/1Aよりも3710/1Aのほうが数万円安い価格で売られていました。
また、当時のノーチラスも「若返り」を意識していたと感じられ、メインだったのは青文字盤ではなく、新しくデザインされた黒文字盤という傾向がありました。
しかしながら、今ではスポーツモデルは「新しい」という要素よりも、70年代的な珍味を感じられるほうが人気という状況になっています。
実際、ノーチラスもロイヤルオークも、70年代のオリジナルモデルに近いほうが人気という状況。ロイヤルオークオフショアのような前衛的な要素よりも、昔から変わらない3針のほうが中古相場が高いわけです。
さて、オーバーシーズはどうかというと、2004年に登場した2世代目まで「新しい」という要素を感じさせる見た目でしたが、2016年に登場した第3世代の現行モデルからは、新しさを感じさせつつも「クラシカル」という要素が感じられるようになったといえます。
第2世代では、「12・3・6・9」といったアラビア数字が目立つ文字盤がありましたが、第3世代では主にバーインデックスが採用。
また、メイン文字盤色も「青」となるなど、ノーチラスやロイヤルオークに寄せた印象となっています。
では、そのような現行オーバーシーズの評価はどうなっているのでしょう。
現在中古相場を見ると、その答えは約293万円というボトム価格。
これは、ノーチラス、ロイヤルオークよりも安い水準であるものの、2019年6月水準と比べて88万円という驚異の値上がりを果たしているわけです。
本記事で参考とした中古腕時計
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本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2019年6月 の安値 |
2020年12月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
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ヴァシュロンコンスタンタン
オーバーシーズ 4500V/110A-B128 |
中古 | 1年 6ヶ月 |
¥2,058,000 | ¥2,938,000 | 880,000 | 142.76% |
この第3世代が登場した際、印象深かったのは、ジュネーブシールの自社製ムーブメントとなった点です。
自社製、ジュネーブシールといえば、90年代パテックを思い出しますが、第一世代のアクアノートがそういった内容だった頃、オーバーシーズにはジラールペルゴベースのムーブメントが搭載されていました。
とはいっても、それがマイナスという印象はそれほど大きくなかったと記憶しています。
むしろ、2016年の「自社製ムーブメント」というほうが、若干“いまさら感”があったといえ、どのように評価されるか難しいところがあると感じたぐらいです。
しかしながら、今の結果を見る限り、この第3世代オーバーシーズは高い市場評価を得るという成功を遂げた様子です。
ノーチラスやロイヤルオークの水準には届かないものの、これまでのオーバーシーズよりも高い価格かつ、値動きも派手という傾向となっています。