日本における高級腕時計のトレンドは、90年代後半にロレックス、2000年代前半にパネライ&フランクミュラー、その後は独立時計師やパテックフィリップに注目が集まるといった変遷だったといえます。
この中で興味深いのは、フランクミュラーへの注目から、独立時計師へと関心が集まった後、パテックフィリップへ到達するとう流れです。
パテックフィリップは、雲上時計として有名なブランドですが、2000年代前半ぐらいの時代においては「雲の上=自分には関係ない」といった感覚で、あまり注目されていなかったわけです。
それが、フランクミュラーから独立時計師といったほうにトレンドがいくと、“作り込み”といった方面への関心が高まります。
また、フランクミュラーや独立時計師の価格帯となると、もはやパテックフィリップを狙うことができるわけで、これら2つの要素から、パテックフィリップが「自分にも関係がある」という感覚になったのだと思います。
そのような流れだったのは、だいたい2005年前後といった時代だといえるのですが、その時、パテックフィリップと同じような注目のされ方をしたのが、このランゲ&ゾーネだといえるでしょう。
2000年代前半当時、パテックフィリップを狙おうと思った場合、100万円以下で買うといったことが可能でした。例えば、筆者はアクアノート5065/1Aを中古62万円、ノーチラス3710/1Aを新品約88万円で購入していますが、それぐらいの価格帯でパテックフィリップは狙うことができたわけです。
その一方で、ランゲ&ゾーネを買おうと思ったならば、その相場は、最低でも100万円以上といった感覚があったわけで、人気のランゲ1を狙いたかったならば、200万円以上という予算を覚悟しなければならなかったのです。
また、ランゲ1のムーブメントは、機械マニアからの評価が高いといった要素がありました。
つまり、ランゲ1は、価格面や機械評価の高さから、『グランドコンプリケーション以外のパテックフィリップよりも凄い』といった感覚があったといえ、当時の腕時計ファンの中で「最も憧れ」といったような存在感だったことでしょう。
そして、そういった感覚は2010年代になってからもあったといえ、実際ランゲ1の主な中古相場は2015年の段階で300万円前後といった感覚がありました。
けれども、2017年頃から、ランゲ1は値下がりが続きます。2015年に約298万円だった101.021が2017年4月に216万円となったわけですが、その後も値下がりが続き、一時は200万円以下といった水準にまで下落。結局のところ、2017年から近頃まで、ランゲ1は200万円台前半といった感覚が続いていたといえます。
その一方で、パテックフィリップのほうは2017年以降、目立った値上がりという状況。特にすごい状態になったのがノーチラスであるわけですが、ロレックスデイトナを脅かすぐらい、世界的な人気モデルといった立ち位置となっています。
そのようなことから、ランゲ1の印象は、2017年以降において、以前よりも目立たなくなっていたといえるでしょう。
しかし、そんなランゲ1に、近頃変化が起きているのです。
それこそが、ランゲ1の価格帯が変わったといういうことなのですが、ざっくりいうならば、全体的に250万円以上という水準になっているという感覚があるのです。
本記事で参考とした中古腕時計
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2020年9月 の安値 |
2021年3月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
ランゲ&ゾーネ
ランゲ1 101.039 |
中古 | 0年 6ヶ月 |
¥1,892,000 | ¥2,529,600 | 637,600 | 133.70% |
今回主に取り上げているのは、WGの101.039ですが、この時計、2020年9月には200万円以下といった水準にまで下落していたのですが、現在では250万円台にまで回復しているのです。
また、他のランゲ1を見ても、250万円以上という水準となっている様子があるわけで、特に200万円以下といった水準が目立っていた2019年、2020年と比べると、現在水準は、なかなかな回復傾向であるといえるでしょう。