中古を買う際、程度と年式を気にされる方がいますが、投資の観点からは最低限きれいであればそこまで気にする必要はありません。中古の腕時計は基本的にきれいです。時計好きは、時計が好きなので大切に扱いますし、時計が好きでない人でも「高いもの」という意識があるので大事に使います。また、傷に関してはよっぽど深い傷でない限り、オーバーホールの時に行われるケースの磨き作業で消えてしまうものがほとんどです。
ごくたまに程度の悪い時計がありますが、他の腕時計と明らかに違う状態です。例えば、磨き作業でも絶対に取れないほどの深い傷がケースにある場合、投資用腕時計としては不合格です。あまり見られない例ですが、ブレスレットがボロボロという場合も交換すると高いので手を出すべきではありません。革ベルトについては消耗品なので程度は気にしなくて大丈夫です。
ラバーベルトには注意が必要です。ラバーベルトはゴムですからステンレスのブレスより傷みやすく程度の悪いものが多く存在します。ラバーベルトは時計のデザインを構成する重要な要素となっているため、革ベルトのように社外品をつけるわけにはいきません。
ブルガリのアルミニウムなどは、現在5万円ほどで購入できるので初心者向け投資用腕時計として最適ですが、ラバーベルトを交換すると本体と同じぐらいの価格になります。相場が100万円の時計でしたらマイナス5万円の修理代は相場が上がってペイできる可能性がありますが、5万円の時計は価格が倍になっても10万円。ペイできる確率は低いですし、ペイできたとしても利益を圧迫してしまいます。
年式についても気にする必要はありません。ただし、それは同一モデルの場合においてです。一見同じように見える時計でもモデルが違うということがあります。たとえば、ロレックスエクスプローラには現時点で5種類のモデルが存在します。『1016』、『14270ブラックアウト』、『14270』、『114270』、『214270』です。このうち『14270』と『114270』の見た目はそっくりですが、違うモデルです。また、同じ『14270』についてですが、『通常版』と『ブラックアウト』でだいぶ相場は異なります。
腕時計は車と違って、程度と年式による評価の差が激しくありません。車は新車に近いうちは、走行距離を走れば走るほど安くなりますし、15年落ちぐらいが最も評価が低くなります。しかし、最低評価を過ぎれば徐々に「旧車」として評価され相場は高くなり、年式や走行距離には関係なくなっていきます。そして最後はクラシックカーとして評価されます。中古車をバカにする人がたまにいますが、趣味としてクラシックカーを買う場合、中古車しかありません。つい最近も知り合いが中古のベントレーを買いました。中古のベントレーといっても1924年製の「W.O.ベントレー」と呼ばれるやつです。1億円ぐらいします。
腕時計について、中古と言われてもピンとこない方は少なくないでしょう。腕時計は趣味のものです。ですから、投資用に向く中古の高級腕時計はクラシックカーのようなものです。とはいえ、初めての腕時計は『新品』がいいと思う気持ちもわかります。私も実はそうでした。
私自身の経験については次の章で詳しく述べます。『中古』の腕時計に抵抗がある方も、ここではとりあえず〝投資用腕時計は中古がいい〞ということを覚えておいてください。
腕時計投資のすすめ 80-82Pより抜粋 |