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現在相場考察

他のパネライ文脈とは異なる評価、ルミノールベースPAM00116

2021年4月1日更新
オフィチーネパネライのPAM00116について斉藤由貴生が執筆。本記事では2016年11月の安値と2021年4月の安値を比較し現在相場を考察。この4年5ヶ月での変動は¥293,700だった。

ルミノールベース PAM00116についての考察(2021年4月)

このところ、値動きするモデルと、そうでないモデルとの差が激しい傾向があるパネライですが、「値動きするパネライ」は何なのかというと、「尖った要素があるモデル」だといえます。

そういったことに該当するのは、主に2000年代前半までに製造されたレアモデルといった傾向があり、特に古いモデルが評価されている印象です。

ここで、パネライの世代をザックリ分けてみたいと思います。

  • プレリシュモン(1993-1996)
  • リシュモン初期世代(1997-1998)
  • リシュモン世代II(1999-2001)
  • リシュモン世代III(2002-2004)
  • リシュモン近代的世代(2005-)
  • と筆者は定義してみました。

    プレリシュモンやリシュモン初期世代は全体的に評価されているといえますが、特に有名なのが、トリチウムの手巻きルミノールでしょう。

    ただ、この世代ではラジオミールのラインナップはほぼなく、唯一あったのが、ロレックスのデットストックムーブメントを搭載した21番でした。

    そして、リシュモン世代IIの段階で、限定モデルなど高級ラジオミールが投入。ルミノールでは、ルミノールクロノが登場していますが、「尖った要素があるモデル」は基本的にこの時期までという傾向が強いといえます。

    リシュモン世代IIIからは、パネライにおける“変化の時期”となるわけで、比較的“新しい世代”という感覚があります。

    ただ、そういった新しめの世代でも、近年のパネライにおける人気要素に該当するモデルは、それなりに評価されるということがあります。

    リシュモン世代IIIにおける評価される要素とは

    それら要素は、

  • 変わった文字盤色(ブルー、ブラウンなど)
  • サテン仕上げ(チタンモデルや69番など)
  • 生産年が短い(1年や2年程度)
  • といった傾向があります。

    ただ、こういった要素を持つパネライは、このところあまり目立った評価とはなっていない様子があるのです。

    特に2018年頃までは、分かりやすく値動きしていた傾向がありましたが、ここ2年ぐらいは、あまり目立った値動きをしないモデルが多くなったと感じられるのです。

    そういった意味では、このPAM00116という存在もそういったことに該当するモデルだといえるのですが、実はこれ、例外的に「随分凄い様子」となっているのです。

    では、この116番はどのような様子かというと、現在ボトム価格はなんと約78万円という様子。前回お伝えした2016年11月水準は約48万円でしたから、この4年5ヶ月という期間で約29万円の上昇となっているのです。

    本記事で参考とした中古腕時計

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    美品 OFFICINE PANERAI(オフィチーネパネライ)腕時計 ルミノールベース PAM00116 F番 チタン ブラウン 手巻き LUMINOR【時蔵】

    本記事の価格比較

    腕時計 状態 期間 2016年11月
    の安値
    2021年4月
    の安値
    変動額 残価率
    オフィチーネパネライ
    ルミノールベース
    PAM00116
    中古 4年
    5ヶ月
    ¥488,000 ¥781,700 293,700 160.18%

    この116番はなぜ評価されているのかというと、この「ブラウン文字盤」という要素がかなりな評価となっている模様です。

    この116番含め、当時のパネライはチタンを“変わり種枠”といったポジションにしており、SSだと黒文字盤が採用されるのに、チタンにはブラウン文字盤を採用。このチタンモデルは、PVDの後継という役割もあったわけですが、実はこのブラウン文字盤という要素、現行当時はかなり人気がなく、最も入手しやすいパネライの1つという感覚だったわけです。

    そのため、パネライは116番の後継モデル、176番からチタンにも黒文字盤を採用したわけですが、その結果、「ブラウン文字盤がレア」という文脈が成立してしまったようです。

    なお、チタンの登場は2000年の55番(ベース)と61番(マリーナ)ですが、2002年に裏スケ化された際、SSと同様にモデルチェンジ。55番が116番に、61番が118番へと変化しています。(限定モデルのチタンルミノールは1999年以前にも存在)

    そして、2003年に『茶⇒黒文字盤』となったため、116番は176番へとチェンジされてしまった結果、生産年は2年ということになるわけです。

    ただし、55番を含めると、その生産年は4年。また、55番も116番同様に「2年しか作られていない」となります。

    ここからが興味深い点なのですが、主だったブラウン文字盤ルミノールの現在ボトム価格を比べてみたいと思います。

  • 116番(ベース、裏スケ、2002-2003製造):約78万円
  • 118番(マリーナ、裏スケ、2002-2003製造):約50万円
  • 55番(ベース、通常裏ブタ、2000-2001製造):約64万円
  • 61番(マリーナ、通常裏ブタ、2000-2001製造):約40万円
  • 61番以外、いずれも、同世代ルミノールよりも相対的に高い価格帯となっているわけですが、116番が抜きん出て高いわけです。

    そして、興味深いのは、この「ブラウン文字盤」の場合、裏スケ化された“新しいモデル”のほうが評価されているという点です。

    『“通常裏ブタ”VS“裏スケ”』では、“通常裏ブタ”のほうが高いという場合が多いわけで、実際、2番と112番などの相関でも「2番のほうが高い」という傾向があります。

    これは、パネライの「古いほうが高い」という文脈にも一致しているため、分かりやすい序列だといえるでしょう。

    しかしながら、ブラウンチタンの場合は、裏スケのほうが高いというように、「新しいほうが評価されている」という状況があるわけです。

    そういった意味で、この116番という存在は、なにかと他のパネライ文脈とは異なる評価がされていると思います。

    この記事の執筆者
    斉藤由貴生
    腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。
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