高級素材であるWGですが、それよりも安価なSSと、見分けが付きづらいという点があります。
そして、高級腕時計においては、同じモデルにSSとWGがラインナップされるということもあるわけですが、その際「SSとWGをどう見せるか」という判断はブランドによって異なります。
どちらかというと、SSとWGの違いをはっきり分かるように区別するというブランドのほうが多いといえますが、90年代ブルガリのように、あえてWGもSSと同じ見た目にするという手法もありました。
それはそれで、「さり気なくWG」という良さがあるわけですが、「WGを買ったなら、ひと目で分かるほうが良い」という意見が一般的なのかもしれません。
そして、ロレックスはというと、この「SSとWGの区別」ということにかなり気を使っていたブランドだと思われます。
今でこそ、スポーツ系へのWGやPtの採用事例が多くなっていますが、2000年代中盤頃まで長らくスポーツ系にはYGしか採用されていなかったわけです。
もちろん、ロレックスにもWGモデルはあったわけですが、それは主にデイデイト。つまりSSが存在しないモデルにだけWGがあったといえます。
そして、最初にWGがスポーツモデルに採用されたのは96年登場のデイトナですが、このデイトナもまた、革ベルトモデルのみだったわけで、SSと明確な違いがありました。
また、2004年にWGブレスレットのデイトナが出た際にも、黒文字盤のデザインがSSと違う(革ベルトWGとも違う)というように、「SSとは違う」ということがはっきりと分かるようになっていたわけです。
さて、このようなことを前提とすると、今回のロレックス新作発表では衝撃的なことが起きたといえます。
それこそが、126710BLROに3連ブレスレットモデルが追加されたということなのですが、このモデルの登場により、「SSとWGの区別が分かりづらいロレックスがある」という事態が発生しました。
つまり、2014年に登場した116719BLROの前期黒文字盤と、今回デビューした126710BLRO(3連)は、今後「見た目の差が分かりづらいモデル」ということになる可能性があるということです。
そうなると、116719BLROが「唯一無二」といった感覚ではなくなるわけで、今回の126710BLRO(3連)の登場によって目立った値動きをするとは思えません。
しかし、いざ現在の116719BLROの様子を見てみると、なんとびっくりすることに目立った上昇という様子。
現在水準は438万円となっているのですが、これは2020年11月水準と比較して約48万円の値上がり状態。また、この438万円というボトム価格は、これまでお伝えした116719BLROとしては最も高い水準であるのです。
本記事で参考とした中古腕時計
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2020年11月 の安値 |
2021年4月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
ロレックス
GMTマスター2 黒文字盤 116719BLRO |
中古 | 0年 5ヶ月 |
¥3,895,000 | ¥4,380,000 | 485,000 | 112.45% |
今回のモデルチェンジによって、GMTマスター2には、「旧世代の生産終了」といった変更がなかったわけで、エクスプローラーのように「急激な変化」となる対象が無いように思われました。
しかし、いざ調べてみたら、なんと意外なことにこの116719BLROが値上がりしているわけです。
値上がりした原因は定かではありませんが、今年の新作でこの116719BLROに影響を与えそうな存在は、やはり126710BLRO(3連)ぐらいしか考えられないといえます。
そういった意味では、116719BLROにそっくりなSSの新作が出たことによって、「実はSSに見えてWG」という、90年代ブルガリのようなさりげない高級感の116719BLROに対して、「良い」という評価がされたのだと思います。