パテックフィリップの日本代理店が一新時計だった時代、いくつかの日本限定モデルが出されていましたが、世界的に見てもそういったパテックフィリップの国別限定品は稀な存在だといえます。
日本以外の国で、その国限定の特別仕様といったモデルはあまり聞かず、筆者が知っている限りでも、ドイツの販売店、WEMPEが主導して出したと思われる5125等ぐらいしか思い浮かびません。
ですから、日本限定というパテックフィリップは、世界的視点でもかなり珍しい部類のモデルということになるわけですが、その中でも特にレア感が強いのが、アクアノートの日本限定青文字盤です。
今となっては、アクアノートのWGに青文字盤が存在しますが、第一世代が現行だった時代は、黒文字盤しかありませんでした。
そういった時代に青文字盤として出されたのが、5066A-010なのですが、これ、文字盤だけでなくラバーベルトも文字盤と同じ「青」という特徴があります。
また、当時のアクアノートの純正箱は「黒」だったのですが、なんと日本限定となると箱までもが「青」。日本限定というマニアックな存在でありながら、細部にまで粋な演出がなされているのが凄いと思います。
ただ、そういったレア感とは裏腹に、2010年代前半頃まで、この日本限定青文字盤は、通常版の5066A-001と「特に変わらない」という価格帯で取引されていました。
なぜ、その時期そういった傾向があったかというと、答えは2つあるといえます。
1つ目が、日本限定青文字盤がミディアムサイズとレディースサイズしかないという点。ミディアムサイズは男性向けなのですが、中古市場ではラージサイズのほうが人気があるわけです。
そして、もう一つが、この日本限定アクアノートの重要な部分の1つである青いラバーベルトが交換不可となっている点。もしかしたら、現在では入手可能という状況に変わっているかもしれませんが、青いラバーベルトは数年前から入手することができないようで、中古品では、「青文字盤に黒いラバーベルト」という個体が珍しくありません。
そのような経緯あったことと、アクアノートやノーチラスに対する注目度が今ほど高くなかったため、2010年代前半において、この日本限定青文字盤は特に評価されるということが無かったのだと思います。
けれども、今となってはアクアノートとノーチラスの注目度は、かつてとはずいぶん変わっている様子。ご存知のように、デイトナを凌ぐほどの大人気モデルとなっているわけです。
そうなると、日本限定青文字盤もしっかりとした評価となって不思議ではないはずですが、やはりその現在水準を見るとそういった様子があります。
アクアノートや3800世代のノーチラスといえば、今年2021年からそれまで以上に「ガバッと上昇」という様子が見られますが、この日本限定アクアノートも「派手に上昇」となっています。
前回、この5066A-010をお伝えしたのは、2018年11月でありますが、その時点では約356万円で購入可能でした。
それが2021年8月の今となっては、なんと約805万円という水準。この2年9ヶ月という間で、440万円以上もの上昇となっているのです。
本記事で参考とした中古腕時計
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2018年11月 の安値 |
2021年8月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
パテックフィリップ
アクアノート 日本限定青文字盤 5066A-010 |
中古 | 2年 9ヶ月 |
¥3,561,840 | ¥8,057,000 | 4,495,160 | 226.20% |
なお、5066A-010には本来ブレスレットは装着されていませんが、今回の個体には、純正ブレスレットが装着。現行当時から、「青文字盤をブレスレットにしたい」という需要はあったといえます。
実は、筆者もそのように考えた一人だったのですが、当時、時計店でたまに売られていたアクアノートの純正ブレスレット価格は24万円程でした。
今となっては、純正ブレスレットが24万円程度で入手できるのは「安い!」と驚かれるかもしれませんが、20年前の感覚ですと、安くはなかったのです。
というのも、5066A-010に純正ブレスレットの24万円を足すと、当時のSSアクアノートとしては、一番高い買い物だったわけで、割高感があったのです。
青文字盤は魅力的だけど、純正ブレスレットなら、最初からそれがついている5065/1Aを買ったほうが「お得」という思考になったわけで、実際筆者も2002年に5065/1Aを買っています。
けれども、そんな割高だった日本限定5066A-010は、2021年の今となってはしっかり「レア物」として評価されている状態。筆者としても、この青文字盤は、持っておけば良かったと思う1本であります。