オーバーホールとは機械の部品を分解し、洗浄、そして再度組み立てするという作業である。主にオーバーホールするということは新品状態に戻す作業であるとされる。
オーバーホールという作業は腕時計にかぎらず、自動車のエンジンやブレーキのパーツなど、機械全般に対して行われるものである。
日本における自動車文化の場合、エンジンのオーバーホールを行う行為は一般的ではないが、長距離を走るタクシーや一部海外の自動車文化において、オーバーホールを行いながら50万キロや100万キロといった単位の走行距離まで車を使い続ける場合がある。
腕時計のオーバーホールは機械式のものに限らず、クオーツのムーブメントでも実施される。
車のエンジンの場合、例えばオイル交換やベルト交換といった“アラカルトな修理”が一般的であるが、日本における腕時計のメンテナンスはオーバーホールが基本となるため、防水性能の回復や注油だけの実施など、一部分においてのみのメンテナンスは一般的でない。
オーバーホールの際、ムーブメントの分解掃除だけでなく、針や風防といった機能が低下した部品の交換も合わせて行う場合がある。オーバーホールを行う、ということは腕時計を安心して使えるよう、全般的にチェックするという工程も含まれている。よってオーバーホールは“定期点検+分解掃除”としてとらえたほうがわかりやすい。また、腕時計のケースやブレスレットを新品状態のように回復させる“磨き作業”もオーバーホールとセットで行われることが多い。ロレックスは磨きを基本作業の中に入れているがパテックフィリップはオプション扱いである。
オーバーホールの受付
オーバーホールは時計修理店やメーカーの修理窓口で依頼することが可能である。メーカーにオーバーホールに出したときの明細書は「本物であることの証明書」としても機能する。
オーバーホールの料金
オーバーホールの作業工賃は様々である。安い修理業者だと2万円程度で行うところもある。メーカーの修理としては雲上ブランドやピアジェなどはシンプルな自動巻でも10万円以上の工賃が基本となっている。また、永久カレンダーのような複雑時計の基本料金は20万円程度を要し、モデルによっては見積もりをするだけでスイスまで送る必要がありキャンセル料だけで20万円かかる場合もある。つまり、ムーブメントの構造が複雑になるほど料金が高くなる。一般的な感覚を分かりやすく書くと、シンプルな3針モデル=5万円(上記の通り雲上系は10万円)、クロノグラフ=7-10万円雲上系は15万円)というイメージである。
オーバーホールでも回復困難な例
ムーブメントにサビが発生したら、分解掃除を行っても機能の回復は困難である。特にケースの中に水が侵入するとムーブメントは一瞬にして錆び回復が困難となり、交換するケースが多い。
オーバーホールの頻度
オーバーホールに対しては、数年に一度行ったほうが良いという意見や、不具合が出てからで十分という意見など様々な見解がある。