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インタビュー

【特集】価値ってなんですか?-元日本ソムリエ協会会長 ・現名誉顧問熱田貴氏が考える「価値」とは

2016年9月25日更新

「価値とは何か」を訊く本特集。その第一回目に「価値」を答えていただくのは、日本ソムリエ協会名誉顧問の熱田貴氏。

熱田貴
昭和13年千葉県生まれ。1997年から2005年まで一般社団法人日本ソムリエ協会会長を務める。現名誉顧問。主な著書は「真実はワインの中に」「ソムリエ讃歌」。平成22年度黄綬褒章受章。スパリブ親善大使。

『楽しいから』が最も重要

-早速ですが熱田さんにとって「価値」は何だと思いますか?

「ワインでも時計でもそうなのですが、生きていくのに必要が無いと言われれば確かに必要がないものです。ただ、必要がないからといって価値が無いわけではありません。」

「なぜそれを求めてしまうのかというとやっぱり楽しいから、それに尽きるでしょう。だからこそ、全てのことにおいて大事なのは『楽しむこと』だと思うのです。」

ワインは育ててもっと価値がつく

「たまに、どのワインに価値があるのかという質問をされるのですが、私はどんなワインにも価値があると思います。1000円で売られているワインだって何十万円もするワインだって、造り手みんなが一所懸命作ったワイン。そのすべてに価値を感じるチャンスが飲む人にはあるのです。ただ、それを楽しむためにはちょっとした知識が必要です。」

「飲む人が自らの知識をもってワインを育てて、もっとワインに価値を付けてあげることが可能です。ソムリエの仕事で最も重要なのも、知識をもってワインを育てるということだと思います。つくり手が造ったワインを蔵でいかに大事に育てるかということが、ソムリエの腕の見せどころです。」

ワインを楽しむ方法

「例えば、グラス選びや提供する温度。これだけでも選ぶ「楽しみ」が生まれ、ワインの価値を一つ上げるでしょう。提供する温度によって同じワインでも違うように感じることができるので、自分が飲む時の温度と、相手の人をもてなす時の温度を変えてみるというのも良いかもしれないですね。」

「自分で飲むときは冒険してちょっと違った温度で飲んでみるとか、ゲストを楽しませるときは一般的に良いとされる温度で提供する。そうやって、いろいろと考えると本当に楽しいですよ。安いワインだって充分に美味しく楽しむことができます。私は職業柄様々な高いワインを口にする機会が多いですが、家では1本500円で売られているワインだって楽しんで飲んでいます。」

おもてなし

「それと、楽しむためには使い分けが重要ですね。いくら大事な相手だからといって、大それたワインを出せば良いというわけではないでしょう。お世話になったからといって、何十万円もするワインを出されたらなんだか申し訳なく思ってしまいます。私は相手が負担を感じたらそれはサービスじゃないと思うのです。」

「だからこそ、楽しむためには使い分けが重要です。自分で飲むワインだったら1000円、ちょっとしたお客さんだったら2000円、大切なゲストには3000円といった具合にルールを決めるのも良いと思います。」

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「高級レストランでおもてなしするのも良いですが、家庭に招くというのも良いと思います。例えば、庭で30分ぐらいかけて食前酒を楽しみ、料理とワインをダイニングで。その後は別室に移動してシガーとコニャック、もしくはカフェというのがヨーロッパでは最高のもてなしとされています。単にお金を出せば良いというのではなくて、一つ知識を加えて楽しむ。そういう姿勢が大事なのだと感じています。」

ワイン投資について

-ワインの値上がりを期待する「ワイン投資」についてはどう思いますか?
ワイン投資とは:ワインを買って保管して値上がりを待つ投資

「ワイン投資ということは、飲めないということですよね?
 だとすれば『楽しむ』ということができないためあまり興味がないです。」

「ワインに対して投資をしたいのであれば、自らワイン造りを行うという事業投資が良いと思います。ぶどうを育てるところから初めて、自分の理想のワインを創る。こんなに楽しいことはないでしょう。そしてそれを売って儲かれば、まさに楽しんで儲けるということになると思います。」

インタビュー当日は気さくな感じで、様々な質問に応える熱田さん。「好きなワインを1つ教えてください」と訊くと、「もしも自らがワインを造っていれば、自分が造ったワインが一番だと思うでしょう」とのこと。

「その点、腕時計投資は良いと思いますね。持っている間でも自ら付けて楽しむということができるので、魅力的な投資だと思います。私も腕時計が好きでいくつか持っています。」

「ただ、人から頂いた腕時計が多いので、今売るモノはありません。ヨーロッパには腕時計をプレゼントする習慣があるらしく、イタリアのソムリエ協会会長などから腕時計を頂いたことがあります。」

-自分で買うならどんな腕時計が良いですか?

「良いと思うのは金の腕時計です。金は相手に何かを伝える強い力を持っています。人に注目されたかったら光るものが重要です。金の腕時計をすることで、人から注目されて会話が生まれ、人と人とのつながりを楽しむことができると思うのです。」

重要なのは「知・好・楽」

「ワインでも時計でも、なくても生きていけるモノです。しかし、なぜそれに価値を感じるのかといえば、好きだから、楽しいからであり、さらに知識がより一層価値を深めてくれます。すべて大事なんだけど、行き着くところは知・好・楽。最終的には楽しむこと。これが私が感じる価値なのかと思います。」

熱田貴さんの著書はこちらから
真実はワインの中に

単行本: 261ページ
出版社: 飛鳥出版 (2000/07)
言語: 日本語ISBN-10: 4900000647
ISBN-13: 978-4900000643
発売日: 2000/07

ソムリエ讃歌

単行本: 202ページ
出版社: 飛鳥出版 (2005/07)
言語: 日本語
ISBN-10: 4780100011ISBN-13: 978-4780100013
発売日: 2005/07

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