「ステンレスのパテック」という存在は、ノーチラスが人気モデルとなってからはごく自然なラインナップという印象ですが、かつてパテックフィリップのステンレス製はかなり目立たない存在でした。
ラインナップの中でステンレスのモデルが少ないため、希少ではあったのですが、“ありがたい希少”というよりは“ちょっと変わった存在”というイメージのほうが強かったのです。
90年代後半にステンレスモデルをメインとしたアクアノートがデビューするなど徐々にステンレス製のパテックは増えてきましたが、それでもステンレスは3針モデルまでのラインナップであり、オーデマピゲのようにステンレス製にも複雑機構のムーブメントを搭載するということはありませんでした。
そんな中、唯一のステンレス製コンプリケーションモデルとして販売されていたのがこの5085/1A。
このパワーリザーブインジケーター+ムーンフェイズの左右非対称な配置は、今ではノーチラス5712/1Aでおなじみですが、それが登場する2005年まではステンレスのコンプリケーションモデルというとこの5085のみだったのです。
当時のモデルとしてステンレス製が珍しいということだけでなく、この5085はステンレスブレスレットまで装備。
というよりも、5085はステンレスブレスレット専用モデルなため革ベルト仕様は存在しません。
この5085と同じ時期に革ベルト仕様がほしければ、似たデザインの5054や5055があったため、5085はブレスレットタイプという役割を担うモデルだったのです。
ちなみにこの5085、イエローゴールドの5085/1Jも存在するためステンレス専用モデルではありません。
5085/1Aの相場は新品実売価格では5055と同額か少し安いという感じでしたが、中古では5055より若干安く評価されています。
下記のように2008年と比べて18万円の値上がりですが、実は2010年前後はもっと安く120万円台という相場でした。
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2008年4月 の安値(ヤフオク) |
2016年12月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
パテックフィリップ
5085/1A |
中古 | 8年 8ヶ月 |
¥1,700,000 | ¥1,880,000 | 180,000 | 110.59% |
2008年のリーマンショック前は、2016年と時計相場が近く、2004年頃と比べてどの時計も値上がり状態だったのです。
しかし、リーマンショックを境にロレックスが値下がり。
それに影響されて値下がりした時計が多々ありました。
もしも5085/1Aを2008年に買って2010年頃に安くなってしまったため「これ以上安くならないうちに売っておこう」なんて考えて売ってしまったのであれば、非常にもったいない話です。
むしろ安くなった時こそ買い時であり、値上がりするチャンスがあるのです。
そして、この5085/1Aはきちんと相場を盛り返し、今では2008年の相場よりも若干高くなっています。
特に最近は、数が減ってきており、見かけることも少なくなった5085/1A。
珍しいステンレスのプチコンモデルという強いインパクトがあるだけに、今後もどうなるか楽しみな時計です。