腕時計への思い入れは人それぞれ。
その時計を見て思い浮かべる顔も、時計の数ほどあるでしょう。
あの人の大切な腕時計とは。その裏にある、大切な思い出とは――。
著名人の腕時計への思いを語っていただきます。第二回目は、タレントのルー大柴さん。
時計がないとその日一日がブルーになる
腕時計は、両親からの中学校の入学祝いでセイコーの時計を万年筆とセットで買ってもらったのが最初。以来、時計は毎日肌身離さずつけているという。
「ウェイクアップしたらすぐつけます。万一忘れたら、その日一日中ブルーですね。朝は5時半にウェイクアップして6時半にはパークで太極拳をしているんですが、時計をフォーゲットしまうときがたまにあるんです。公園にも時間に正確な大きい時計はあるとはいえ、自分の腕でパッと確認できないと落ち着かない。たかだか30分やって帰るだけなのに時計をしていなかった自分に悔いるんです」
現在所有している時計は5~6本。普段はイタリアのランカスターやロンジン、オメガを、その日のスタイルに合わせてつけ替えているという。
清水のステージからダイブする思いで買ったオーデマピゲ
この日につけていたのは、オーデマピゲ。9年ほど前に当時の銀座ブティックで自ら購入したものだ。
「再ブレイクしたとき、ちゃんとした時計が一つ欲しいと思ったんです。ファッションにもこだわるようになってきて、マネージャーが『スーツのときはいいものをつけたほうがいい』というんでオーデマピゲを買おうかという話に。前から『私もあれを買えるようになったらいいな』と、憧れていたんです。
世界の3大ブランドの一つですから、清水のステージからダイブする思いで買いましたよ。ドキドキしながらカードでお会計を済ませたら、日本支社長がシャンパンを出してくれて、記念に掛け時計もくださった。ありがたかったですね。『ここまで来たか、やっと本物の時計が買えたな……』と」
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オーデマピゲは、パーティーやテレビ番組などのここぞというときに、かちっとしたスーツとともにつけるという。
ロンジンを見ると思い出すグランドマザーの顔
特に思い入れがあるのは、ロンジンの腕時計。20代前半のときに、今は亡き祖母から譲ってもらった形見の品だ。大正製薬の鷲のマークが文字盤に刻印されている、世界に70個しかないレアものなのだという。
「マイグランドファーザーは印刷会社をしていて、大正製薬の薬の箱を刷っていたツテで、頂いたそうです。僕が『鷲のマークがいいね』といったら『じゃあおまえにやるよ』と譲ってくれた。今でもこの時計を見ると、僕がタレントとしてデビューしたとき『やったね!あんた!』と喜んでくれたグランドマザーの顔が目の前に浮かびます。私のつたないジョークが好きで何でもラーフしてくれた。そして褒め上手な人でしたね」
ロンジンは普段大切にしまっていて、気が向いたときにスーツに合わせてつけている。
いつか二人のマイサンズに
ルーさんには会社勤めをしている二人の息子がいる。まだ高級な時計はつけるに至っていないそうだが、自分が祖母から譲ってもらったように、いずれ息子たちに譲りたいと考えている。
「コレクトしてきた時計はどれを見ても感慨深いものがありますよね。このオーデマピゲもそうですが、『9年前のあのとき買ったんだ。あのとき高くてサプライズしたな』と、当時を思い出したり。だから、譲るまでは手放したくないんです。こういう思いは、年を重ねるにつれて強くなってきましたね。
僕にとって時計は、自分のライフを刻んでくれる大切なフレンド。ただ、親友もいろんな親友がいる。一番大切な親友は、今つけているこのオーデマピゲですね」
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