トラベルタイムといえば、最近は“アクアノートトラベルタイム”という印象ですが、かつては“カラトラバトラベルタイム”という存在。
トラベルタイムには、GMT機能が採用されていますが、パテックフィリップにおけるこの機構はコンプリケーションと分類するか否かが難しい時計。
2015年のバーゼルで出たトラベルタイムを搭載するモデルは、現在パテックフィリップのホームページでは「コンプリケーション」のカテゴリに分類されていますが、その名称は「カラトラバパイロットトラベルタイム」です。
この“パイロット”がつくトラベルタイムも、アクアノートトラベルタイムも、両方共かつてのカラトラバとは違い、自動巻ムーブメントが採用。そして手巻き時代には無かった昼夜を示す窓も追加されています。
この「窓」の存在こそ、コンプリケーション的な機構であると感じ、現在のモデルがコンプリケーションというカテゴリに分類されても違和感のない理由の1つです。
しかし、かつてのカラトラバトラベルタイムは、パテックフィリップのホームページでもカラトラバの欄に表示されており、コンプリケーションという分類ではありませんでした。
さらに、この時計の新品実勢価格はコンプリケーションとだいぶかけ離れていたのです。
この頃、コンプリケーションに分類されるモデルで、もっとも機構が単純そうなのは5055などムーンフェイズ+パワーリザーブというムーブメント。
そのムーブメントを採用する5055は、当時の新品実勢価格が180万円程度しましたが、このトラベルタイムは120万円台だったのです。
ちなみにその頃、最も人気なコンプリケーションは年次カレンダー5035。
永久カレンダー機構といえば、超高級腕時計の代名詞的存在で、パテックフィリップではグランドコンプリケーションとなる要素ですが、機構を単純にした年次カレンダーはコンプリケーション扱い。
その年次カレンダーの新品実勢価格は200万円程度でした。
ですから、機構的にも実勢価格的にもコンプリケーションに分類されるか謎だったワールドタイム。
そんなワールドタイムですが、最近ではなんと年次カレンダー5035より高いといっても過言でない相場です。
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2012年3月 の安値(ヤフオク) |
2017年4月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
パテックフィリップ
トラベルタイム 5134G |
中古 | 5年 1ヶ月 |
¥1,450,000 | ¥2,367,000 | 917,000 | 163.24% |
2012年におけるトラベルタイムの相場は既に140万円以上という水準ですが、これはかつての新品実勢価格を考慮すると高いという判断にもなります。
その頃、金無垢ノーチラス3800ですら130万円台。
ですから、トラベルタイムはかなり割高に感じたのです。
しかし、その頃割高と感じても、ワールドタイムはそこから90万円以上の値上がり。
「高い」と思ってもそこからさらに値上がりするモデルの事例は以前にもお伝えしましたが、このトラベルタイムのように他のコンプリケーションより不利な状況でも値上がりした事例は珍しいと思います。
トラベルタイムは、コンプリケーションなのか、シンプルなカラトラバシリーズの1種なのかその判断が難しい時計です。
こういうキャラクターの場合、不人気傾向となってもおかしくないところですが、この時計は評価されているのです。
そして、今では年次カレンダー5035と同じか高いぐらいの相場という、かつての常識では考えられない水準に達しているのです。