「カリブルドゥカルティエ」というこの時計。その名の通り、カルティエが自社開発したムーブメント「1904」を搭載したモデルです。
この時計がデビューしたのは2010年ですが、2010年といえばETA2010年問題の年。
カルティエもカジュアルラインにはETAムーブメントを搭載していましたから、それによる影響は受けるはず。
自社ムーブメントの開発、ということにはETA供給停止の影響もあるかもしれません。
しかし、このカリブルドゥカルティエというモデルは、カルティエのラインナップにおいてはどちらかというと上級です。
かつてより、カジュアルラインにはETA、上級ラインにはピアジェやフレデリックピゲというようにムーブメントを使い分けてきたカルティエ。
カリブルドゥカルティエクラスのグレードには基本ETAムーブメント以外のモノが使われてきたことからすると、ETA問題による自社ムーブメント開発ということより、「マニュファクチュール化」というブランディングを意識させるモデルです。
勿論、このムーブメント開発の経緯はETA問題なのかブランディングなのか、その理由は定かではありません。
ただ、最初に上級用として出し、ある程度製造数が増えコストが安くなった際、下級モデルへも使うという事ができるメリットはあるでしょう。
そのため、カルティエが自社ムーブメントを開発するということは、ブランディング的にもETA問題への対応という側面からも意味あることなのです。
けれども、カルティエが自社ムーブメントを開発しなくとも、同じリシュモングループには歴史と経験あるマニュファクチュールがいくつも存在。
ジャガールクルトやピアジェ製のムーブメントを搭載させたほうが良い気がします。
とはいえ、同じくリシュモンのパネライも自社ムーブメントモデルの製造を2006年頃から行っており、各ブランドごとの「マニュファクチュール化」というのはリシュモンの方針なのかもしれません。
しかし、ユーザーとしてパネライやカルティエに期待するのはマニュファクチュール化そのものではなく、グッと来る時計を造ってくれること。
パネライにもカルティエにも歴史あるモデルが多々あり、そのモデルをベースにジャガールクルトやピアジェのムーブメントを搭載したモデルがあったならば、多くの人が「欲しい」と思うでしょう。
90年代までカルティエは、
というストーリー性のあるモデルを中心にラインナップしていました。
しかし、2002年に男性専用モデルとしてラインナップされた「ロードスター」以降は、歴史もストーリーも存在しない新たなシリーズを中心に展開。
そして、男性用の中心に位置するこのカリブルドゥカルティエも、初のマニュファクチュール化という以外にストーリーを感じない時計です。
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2014年12月 の安値(ヤフオク) |
2017年5月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
カルティエ
カリブル ドゥ カルティエ W7100041 |
中古 | 2年 5ヶ月 |
¥448,000 | ¥367,200 | -80,800 | 81.96% |
2010年にデビューしたこのカリブルドゥカルティエですが、翌年2011年頃における新品実勢価格は49.5万円程度。
その頃といえば、腕時計が全体的にかなり安い時期ですが、それはあくまで中古相場でのこと。
中古相場がかつて無いほど安くなっている状況の中、新作として登場する新品の時計は高くなっていました。
この49.5万円という額が2011年頃においてどのぐらいの水準に位置していたか、ということについては同じ時期にデビューしたロレックスの新品実勢価格を見ると分かりやすいでしょう。
カリブルドゥカルティエと同じ2010年に新型となったのは、エクスプローラ214270とサブマリーナ116610LN。
当時それらは、
という状況。
ですから、カリブルドゥカルティエの革ベルトモデルはエクスプローラとサブマリーナの間に位置したモデルです。
ちなみに、当時の中古相場においてエクスプローラ114270は23万円程度、カリブルドゥカルティエに相当するロードスターは25万円程度という感じです。
なお、2011年当時、「高くなった」と感じた新品の腕時計価格ですが、その頃サブマリーナもしくはエクスプローラを買っていたならば、現在「新品で買っても値上がり状態」という現象が起きています。
一方、このカリブルドゥカルティエの場合、2011年の新品相場と比較しても2014年の中古相場と比較しても値下がり状態です。
自社ムーブメントを売りにするのではなく、パシャのように歴史と伝統あるモデルに対し、ジャガールクルト製ムーブメントを搭載するといったほうが、リシュモングループとしての優位性と独自性を活かすことができ、ユーザーからしてもグッと来る時計となりそうだと感じます。