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現在相場考察

自社ムーブメントを前面に押し出した時計、カルティエ『カリブル ドゥ カルティエ』

2017年5月7日更新
カルティエのカリブルW7100041について斉藤由貴生が執筆。本記事では2014年12月の安値(ヤフオク)と2017年5月の安値(楽天)を比較し現在相場を考察。この2年5ヶ月での変動は8万800円の値下がりだった。

カリブル ドゥ カルティエ W7100041についての考察(2017年5月)

カリブルドゥカルティエ」というこの時計。その名の通り、カルティエが自社開発したムーブメント「1904」を搭載したモデルです。

この時計がデビューしたのは2010年ですが、2010年といえばETA2010年問題の年。

カルティエもカジュアルラインにはETAムーブメントを搭載していましたから、それによる影響は受けるはず。

自社ムーブメントの開発、ということにはETA供給停止の影響もあるかもしれません。

しかし、このカリブルドゥカルティエというモデルは、カルティエのラインナップにおいてはどちらかというと上級です。

かつてより、カジュアルラインにはETA、上級ラインにはピアジェやフレデリックピゲというようにムーブメントを使い分けてきたカルティエ

カリブルドゥカルティエクラスのグレードには基本ETAムーブメント以外のモノが使われてきたことからすると、ETA問題による自社ムーブメント開発ということより、「マニュファクチュール化」というブランディングを意識させるモデルです。

勿論、このムーブメント開発の経緯はETA問題なのかブランディングなのか、その理由は定かではありません。

ただ、最初に上級用として出し、ある程度製造数が増えコストが安くなった際、下級モデルへも使うという事ができるメリットはあるでしょう。

そのため、カルティエが自社ムーブメントを開発するということは、ブランディング的にもETA問題への対応という側面からも意味あることなのです。

けれども、カルティエが自社ムーブメントを開発しなくとも、同じリシュモングループには歴史と経験あるマニュファクチュールがいくつも存在。

ジャガールクルトピアジェ製のムーブメントを搭載させたほうが良い気がします。

とはいえ、同じくリシュモンのパネライも自社ムーブメントモデルの製造を2006年頃から行っており、各ブランドごとの「マニュファクチュール化」というのはリシュモンの方針なのかもしれません。

しかし、ユーザーとしてパネライやカルティエに期待するのはマニュファクチュール化そのものではなく、グッと来る時計を造ってくれること。

パネライにもカルティエにも歴史あるモデルが多々あり、そのモデルをベースにジャガールクルトピアジェのムーブメントを搭載したモデルがあったならば、多くの人が「欲しい」と思うでしょう。

90年代までカルティエは、

というストーリー性のあるモデルを中心にラインナップしていました。

しかし、2002年に男性専用モデルとしてラインナップされた「ロードスター」以降は、歴史もストーリーも存在しない新たなシリーズを中心に展開

そして、男性用の中心に位置するこのカリブルドゥカルティエも、初のマニュファクチュール化という以外にストーリーを感じない時計です。

カルティエ カリブル カリブルドゥカルティエ W7100041¥371,606〜¥618,000(2024年12月3日現在)

本記事の価格比較

腕時計 状態 期間 2014年12月
の安値(ヤフオク)
2017年5月
の安値(楽天)
変動額 残価率
カルティエ
カリブル ドゥ カルティエ
W7100041
中古 2年
5ヶ月
¥448,000 ¥367,200 -80,800 81.96%

2010年にデビューしたこのカリブルドゥカルティエですが、翌年2011年頃における新品実勢価格は49.5万円程度。

その頃といえば、腕時計が全体的にかなり安い時期ですが、それはあくまで中古相場でのこと。

中古相場がかつて無いほど安くなっている状況の中、新作として登場する新品の時計は高くなっていました。

この49.5万円という額が2011年頃においてどのぐらいの水準に位置していたか、ということについては同じ時期にデビューしたロレックスの新品実勢価格を見ると分かりやすいでしょう。

カリブルドゥカルティエと同じ2010年に新型となったのは、エクスプローラ214270とサブマリーナ116610LN

当時それらは、

  • エクスプローラ214270=44.5万円程度
  • 116610LN=57.9万円程度

という状況。

ですから、カリブルドゥカルティエの革ベルトモデルはエクスプローラとサブマリーナの間に位置したモデルです。

ちなみに、当時の中古相場においてエクスプローラ11427023万円程度カリブルドゥカルティエに相当するロードスター25万円程度という感じです。

なお、2011年当時、「高くなった」と感じた新品の腕時計価格ですが、その頃サブマリーナもしくはエクスプローラを買っていたならば、現在「新品で買っても値上がり状態」という現象が起きています。

一方、このカリブルドゥカルティエの場合、2011年の新品相場と比較しても2014年の中古相場と比較しても値下がり状態です。

自社ムーブメントを売りにするのではなく、パシャのように歴史と伝統あるモデルに対し、ジャガールクルト製ムーブメントを搭載するといったほうが、リシュモングループとしての優位性と独自性を活かすことができ、ユーザーからしてもグッと来る時計となりそうだと感じます。

この記事の執筆者
斉藤由貴生
腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。
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