高級なパシャといえば、フレデリックピゲ製ムーブメントを搭載したパシャ38mmという印象があります。
パシャ38mmは90年代後半に登場した後、2000年代半ばで生産終了となるのですが、その理由は世代交代。
2005年にデビューしたパシャ42mmは、パシャ38mmの後継モデルです。
このモデル、パシャ38mmのデザインをうまく近代化し、さらに2005年頃の“ケース拡大”という流行りもうまく取り入れたモデルだと思います。
しかし、パシャ38mmと比べると文字盤とブレスレットの形状が簡略化されたようなデザインとなっており、それがコストダウンとも取れてしまうという点がマイナス要素として存在。
特に文字盤は、パシャ38mmがギョーシェ彫りだったのに対し、42mmは目立った加工がされていない通常の文字盤。
それはコストダウンではなく、「シンプルさの演出」という可能性もありますが、パシャ42mmの場合、金無垢モデルとなるとギョーシェ文字盤が採用されているため、「コストダウン」と評価されてしまう傾向です。
そんなパシャ42mmはムーブメントの加工もパシャ38mmと比べるとシンプルになったため、魅力がないかと思われてしまうのが残念なところ。
しかし、実際はジャガールクルトベースのキャリバー8000MCというムーブメントが搭載されており、手を抜いたモデルではないのです。
同じくリシュモングループであるジャガールクルト製のムーブメントをカルティエが採用するというのはとても良いコラボレーションだと感じます。
ジャガールクルト製のムーブメントを搭載し、パシャ独特の世界観があるというのはとても魅力的。
さらにパシャ38mmの場合、3針モデルのベースムーブメントはジラールペルゴ製だったため、見方によってはグレードアップという表現もできるでしょう。
ただ、パシャ38mmのジラールペルゴムーブメントはオーバーシーズにも採用されているぐらい上級なモノ。
いずれにしても、パシャ38mmの後継としてパシャ42mmはきちんと成立する内容となっています。
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2008年10月 の安値(ヤフオク) |
2017年6月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
カルティエ
パシャ42mm W31072M7 |
中古 | 8年 8ヶ月 |
¥450,000 | ¥388,000 | -62,000 | 86.22% |
現在、パシャは基本的に生産終了。
カルティエはカリブルドゥカルティエを中心に自社ムーブメント化を推進していますが、このパシャ42mmのようにリシュモングループの他ブランドから良いムーブメントを調達するというほうが、魅力ある時計になると感じます。
時計ファンとしてカルティエに期待するのは、ムーブメントそのものよりも、独特の世界観だと思うのです。
パシャのように、他では見ることのない独特なデザインであったり、そのモデルが誕生したストーリーなどに大きな価値があるわけで、その魅力ある時計の中身にジャガールクルトなどが搭載されていることでその価値がより増幅します。
最近、金無垢ラジオミールやルミノールクロノなど高級モデル時代のパネライが評価されていますが、それらはパネライの自社製ムーブメント搭載モデルよりずっと評価されているのです。
パネライにもカルティエにも望むのは、マニュファクチュール化ではなく、リシュモングループの魅力あるムーブメントを搭載したモデルを作ることだと強く思います。
例えば、ランゲ&ゾーネのムーブメントを搭載したプラチナラジオミールが限定で出たとなれば争奪戦となるでしょう。
そしてこのパシャ42mmは、ジャガールクルトムーブメントを搭載するという良い方向性なのに、2008年と比べて値下がり状態かつ30万円台後半で買えるという存在。
この人気のなさは先のように、コストダウンモデルと誤解される傾向があるからでしょう。
高級ムーブメント搭載のパネライが値上がりしている中、このパシャはなかなか魅力ある1本だといえるでしょう。