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現在相場考察

気合を感じられる腕時計、ヴァシュロンコンスタンタン『マルタグランクラシック』

2017年6月13日更新
ヴァシュロンコンスタンタンのについて斉藤由貴生が執筆。本記事では2008年3月の安値(ヤフオク)と2017年6月の安値(楽天)を比較し現在相場を考察。この9年3ヶ月での変動は12万9900円の値上がりだった。

マルタ グランクラシック 81000/000Jについての考察(2017年6月)

手巻きムーブメント、スモールセコンド、ギョーシェ彫り文字盤。

三雲ブランドの腕時計像としてもっともイメージされるこの古典的な内容ですが、ヴァシュロンコンスタンタンがこのようなモデルを出す場合、そこにはカラトラバという強いライバルが存在します。

ですから、ヴァシュロンコンスタンタンがこの分野に挑む場合、カラトラバとは“違う価値”を提案する必要があるのですが、マルタグランクラシックはそれをうまく表現することに成功したモデルだと感じます。

このモデルは、カラトラバよりデザインがモダンな印象であり、特にラグ部分は特徴的

このデザインはこの時代のヴァシュロンコンスタンタンに共通するものであり、気合を感じられます。

その気合はムーブメントにも現れており、このマルタグランクラシックの手巻きムーブメントは自社製

ヴァシュロンコンスタンタンといえば、オーバーシーズがそうであるように、三雲ブランドでもあるにも関わらず、自社製ムーブメントという印象がありません。

実際、1940年頃から長きに渡りジャガールクルトやレマニア等のベースムーブメントを使用

ですから、おそらくこのCal.1400は、数十年ぶりに造られたヴァシュロンコンスタンタンによる自社製ムーブメントであるのです。

最近、リシュモングループはパネライやカルティエでも自社製ムーブメント化を強く打ち出していますが、それらブランドとは“自社製ムーブメント”という重要度が違います。

“三雲時計”であるヴァシュロンコンスタンタンにとってマニュファクチュールという要素はかなり重要。

まして、三雲ブランドの中で最も歴史があるわけですから、むしろ「なぜ自社製ムーブメントでなかったのか」という疑問のほうが大きいように感じます。

そして、このマルタグランクラシックのようにオーソドックスなシンプルな時計の場合、より一層自社製ムーブメントだということが重要です。

ですから、ヴァシュロンコンスタンタンが2000年にこのマルタを発表した際、自社製を搭載したということには、とても重要な意味があるのです。

そして、自社製ムーブメントを搭載したからこそカラトラバと比較することができ、「カラトラバよりモダンなデザインが好印象」というような見方が可能となります。

しかし、カラトラバと勝負できるモデル造るということを実現できた反面、市場ではそこまで高評価されておらず、値上がり傾向ではあるのですが、同時期のカラトラバと比較してかなり安い相場となっています。

ヴァシュロンコンスタンタン マルタ¥693,000〜¥7,780,000(2025年4月14日現在)

本記事の価格比較

腕時計 状態 期間 2008年3月
の安値(ヤフオク)
2017年6月
の安値(楽天)
変動額 残価率
ヴァシュロンコンスタンタン
マルタ グランクラシック
81000/000J
中古 9年
3ヶ月
¥735,000 ¥864,900 129,900 117.67%

グランクラシックと同じ時期に作られたカラトラバを買おうと思った場合、現在100万円以上は確実といったところですが、これは80万円台で購入可能。

  • ギョーシェ彫り
  • 自社製ムーブメント
  • スモールセコンド
  • イエローゴールド

という基本的かつ古典的な内容でありながら、全体的にモダンな印象かつ、ヴァシュロンコンスタンタン独特の世界観を感じられるデザインはとても魅力的。

このモデルに限らず、2000年前後のリシュモングループの腕時計は魅力的なモノが多い印象で、かなり気合を入れて作られていたことが分かります。

しかし、その“気合”はコアな時計ファンには理解可能でも、広く一般的に伝わるまでには時間がかかります。

そして、そのことに気づいたリシュモングループは、分かりやすい時計を造るという方針に変わり、カルティエ、パネライの自社ムーブメント化や、ヴァシュロンコンスタンタンのジュネーブシール取得に力を入れたわけです。

けれども、そろそろ“分かりやすさ”よりこのマルタグランクラシックのような独特の世界観のある時計が注目される頃だと思うのです。

この記事の執筆者
斉藤由貴生
腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。
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