「シンプルな機構のムーブメントをとことん極める時計作り」といえば独立時計師のフィリップ・デュフォー氏が有名ですが、ロレックスもそうであるということは忘れがちです。
ロレックスの腕時計は、ムーブメント以外の要素に数多くの話題性があるため、あまりムーブメントについて触れられない傾向。
ですから、ロレックスのムーブメントが究極的に実用性を重視したストイックな哲学をもって作られているということはあまり大きな話題とはなりません。
一般的には、「凄いムーブメント=複雑機構」という印象になりがちで、それは筆者も同様です。
しかし、数々のノウハウを持ったロレックスが、複雑機構モデルを作れないわけがなく、長い間シンプルなムーブメントしか製造しなかったのは「あえて」でしょう。
複雑機構モデルがデリケートであるということは有名で、“壊れやすいから使うことができない”というフラストレーションが溜まるのを解消するためにシェルマングランドコンプリケーションが生まれたという経緯があるほど。
つまり、ロレックスはちょっとやそっとで壊れるような腕時計を造りたくなかったのです。
ロレックスが実用性を重視するというのは、他社製ムーブメントを搭載していた時代のデイトナにおいても見出すことができ、36000振動というハイビートが売りのエルプリメロをあえて28800振動に落としたのは有名です。
そんなロレックスはおいて異変が現れたのは2007年。
3針もしくはクロノグラフというシンプルなラインナップの中に、突如プチコン的仕掛けを持つシリーズが現れたのです。
しかもその複雑機構はデイデイトなどドレス系にではなく、スポーツ系のモデル「ヨットマスター2」として登場。
ヨットマスター自体が最高級モデルでしたが、ヨットマスター2はさらに上行く最高級モデルとして、デイトナを上回る新品実勢価格で登場。また、その際ラインナップされたのは金無垢のみで、数年というスパンを経てコンビやステンレスが追加。
ステンレスモデルの116680は、長らく150万円前後という相場でした。
しかし、2016年夏頃、この116680が130万円台になるという自体が発生。
その時期において、116680はデイトナ16520や116520よりも30万円程度高い水準でした。
また、デビューした時期も2013年であるため、3年後という2016年は値下がり傾向となってもおかしくない頃。
そのため、値下がり傾向の始まりかと思ったのですが、2016年10月から現在にかけて10万円以上高くなっています。
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2016年10月 の安値(楽天) |
2017年6月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
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ロレックス
ヨットマスター2 116680 |
中古 | 0年 8ヶ月 |
¥1,350,000 | ¥1,470,000 | 120,000 | 108.89% |
2017年のバーゼルにて116680は、針の形状が「ベンツ針」になるというマイナーチェンジを受けましたが、それが相場に与えた影響はまだ少ないでしょう。
2016年夏頃から2017年春頃という短期間の間に10万円以上の値上がりとなったロレックスはこのモデルの他にも多々あります。
とはいえ、値上がりしなかったモデルもあり、例えばエクスプローラがそうであるように、人気のあるスポロレでも全てが値上がりしたというわけではありません。
値上がりしたモデルは、グリーンサブやシードゥエラーのDブルーダイヤルなどであり、強い個性があるモデルが短期での値上がりとなったという傾向があります。
またステンレスのデイトナについては、短期で50万円近い値上がり。そのため、ヨットマスター2の116680より、16520のほうが遥かに高くなりました。
すると、デイトナよりも安い116680の現在価格は相対的に見合っていると感じるのです。