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現在相場考察

ファット4、ビッグスイスと呼ばれたのは最近か、サブマリーナ16610LV

2017年7月3日更新
ロレックスのサブマリーナー16610LVについて斉藤由貴生が執筆。本記事では2011年5月の安値(ヤフオク)と2017年7月の安値(楽天)を比較し現在相場を考察。この6年2ヶ月での変動は¥1,370,000だった。

サブマリーナ ファット4 ビッグスイス 16610LVについての考察(2017年7月)

ロレックスサブマリーナは1950年代から存在する長寿モデルですが、ステンレスモデルのベゼルは黒1色の展開でした。黒以外のベゼルとして有名なのが“青サブ”であり、青文字盤と青ベゼルという配色が魅力的な存在。ただ青サブは、コンビ以上にのみ設定された配色であり、長い間ステンレスのサブマリーナは黒ベゼルしかありませんでした。

そんなステンレスのサブマリーナに、初めて黒ベゼル以外が採用されたのは2003年になってからのこと。その際デビューしたモデルこそ、この緑ベゼルモデル16610LVです。

GMTマスター2 16710の場合、青赤、赤黒、黒と3色のベゼルが用意されており、それらは後から交換することも可能です。一方、サブマリーナの場合、通常通常の黒ベゼルモデルは16610、緑ベゼルモデルは16610LVとリファレンスが異なるため、ベゼルディスクの交換は不可能。

また16610LVは、ベゼルが緑色というだけでなく、文字盤も16610とは異なります。ドット部分が大きい16610LVの文字盤は2003年に登場した際、次の時代のサブマリーナを予感させたデザインとも言われました。

しかしその頃、16610LVの細かい仕様違いが実に複雑で、それによってこれほど値段が違うようになるとは誰も予測できなかったでしょう。

細かい仕様違いによる価格差

細かい仕様違いで相場が異なるというのは、2003年頃において既に多くの人が知っていることでした。というのも、その頃既にデイトナ16520のレア仕様が高値だったからです。

デイトナの細かい仕様違いというのは、

  • 200タキメーター
  • 4段表記文字盤
  • P番

などがありますが、それらは単体もしくは組み合わさることにより、他の16520と比べて高いという現象が起こっていたのです。

そのため、2004年頃においては出たばかりであったこの16610LVについても、細かい仕様違いがあることは、雑誌などでも紹介されていることでした。

16610LVの仕様違いとは

年式 ビッグスイス ファット4
Mark 1 Y、F
Mark 2 不明 ×
Mark 3 F ×
Mark 4 D × ×

16610LVは、各希少要素の組み合わせが複雑なのですが、それらはMark1というように、古い順でカテゴライズされています。

ビッグスイスとは

16610LVビッグスイス

ビッグスイスとは、「SWISS MADE」の表記が大きめであることを示しています。

ファット4(フラット4)とは

16610LVファット4

ファット4とは、ベゼルの40部分の「4」のフォントが他の年式と異なるということを示しています。

希少性の変遷

高値になる要素として、最近有名なのは「ビッグスイス、ライムベゼル、ファット4」の3つなのですが、これらが希少要素とされ始めたのは意外にも最近です。

2004年頃において既に16610LVに細かい仕様違いがあることが雑誌などで検証されていましたが、その際着目されたのは、「ビッグスイス」の部分のみ。そしてその際「SWISS MADE」表記が小さいほうがレアと言われており、大きい方、すなわち「ビッグスイス」がレアと言われている現在とは評価が異なるのです。確かに2004年頃において、主に流通していたのは初期モデルのマーク1でしょうから、それより新しいモデルのほうが数が少ないというのは理解可能です。

では、いつから「ビッグスイス、ファット4、ライムベゼル」ということが、希少要素として認識されるようになったかというと、16610LVが生産終了となった翌年の2011年頃においてです。

しかし、2011年頃において、ファット4などの希少性が高いと認識していたのはごく一部の人のみであり、相場に影響をあたえるほどのインパクトでは無かったのです。

当然、売り出されている16610LVの宣伝文句には「ビッグスイス、ファット4、ライムベゼル」などの表記はありません。その頃において16610LVは決して不人気というわけではなく、相場は本来より高価であるコンビの16613より高値という状況。

けれども、16610LVはどれも同じような評価となっており、過去の売出情報を見ると、今となってはかなり高い「ビッグスイス、ファット4、ライムベゼル」という要素を備えたモデルが、他の年式と同じ価格で売られています。まして、それらは単に「F番」としか記されていないため、画像を確認してはじめて「ビッグスイス、ファット4」ということが確認できるのです。

今となってはかなり高値の16610LV“Mark1″。実は、2011年頃まで40万円台で手に入ったのです。

 

本記事の価格比較

腕時計 状態 期間 2011年5月
の安値(ヤフオク)
2017年7月
の安値(楽天)
変動額 残価率
ロレックス
サブマリーナ
ファット4 ビッグスイス
16610LV
中古 6年
2ヶ月
¥428,000 ¥1,798,000 1,370,000 420.09%

2011年頃は、前年の2010年にステンレスのサブマリーナデイトがフルモデルチェンジしたことに影響され、若干5桁リファレンスが高くなっていた時代です。

コンビである青サブ16613は、2007年頃まで中古が40万円前後という相場でしたが、リーマンショック後に30万円台前半まで下落。それが、2011年頃には30万円台後半から40万円近い相場にまで戻っていたのです。

16610LVのMark1が42万8000円という価格だったことは、今の常識を持ってみるとかなり「安い」と驚く現象です。ただ、その頃においてコンビモデルより高かった16610LVは見方によっては「割高」という印象にもなったのです。

16610LVの高騰

2011年頃まで、先程のようにMark1でも高い相場ではありませんでしたが、2012年頃より変化が生じます。

その頃より、やっと商品タイトルに「ファット4」や「ビッグスイス」と書かれるようになったのです。

そして、それら要素を備えるモデルが評価されるようになり、徐々に高値とへと変化。

その結果、かつて40万円台で売られていた16610LVの「ファット4、ビッグスイス」は、今では170万円以上という水準にまで上昇。2011年に購入できた場合、なんと130万円以上の値上がりを体験できたことになるのです。

この記事の執筆者
斉藤由貴生
腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。
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