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現在相場考察

実は面白い要素がある、タグホイヤーキリウムWL5110

2017年8月9日更新
タグホイヤーのキリウムWL5110について斉藤由貴生が執筆。本記事では2012年8月の安値(ヤフオク)と2017年8月の安値(楽天)を比較し現在相場を考察。この5年0ヶ月での変動は¥1,400だった。

キリウム WL5110についての考察(2017年8月)

中古の高級腕時計といっても様々な価格帯が存在しますが、その最低価格はいくらになるのかといえば5万円という額が妥当だと感じます。

実際、10万円台前半でかなり安いという印象があり、人気モデルを買おうと思ったら25万円以上となるでしょう。また、ロレックスの場合、現在50万円以上という相場が多い傾向です。

そのため5万円で買える腕時計というと、あまり注目されることはなく、その存在は見過ごされがちです。

とはいっても5万円で買えるモデルの選択肢もそれほど多いわけではなく、特に注目されるようなモデルも少ないため、見過ごされても仕方ない側面もあります。

では、5万円で買える時計にはどのようなモノが存在するかというと、

  • ブルガリアルミニウム(自動巻)
  • オメガコンステレーション(クオーツ)
  • タグホイヤーキリウム(自動巻、クオーツクロノ)
  • などが存在。

    そしてその中で特に輝いて見えるモデルこそ、タグホイヤーキリウムです。

    キリウム」は1997年に「4000」の後継として誕生。

    今のラインナップとは違い、当時のタグホイヤーは防水クオーツモデルが中心で、そのモデル名も「1500」とか「6000」というように数字が中心でした。

    それに対して「キリウム」というモデルは、当時のタグホイヤーとしては約20年ぶりに登場した“数字でないモデル名”の時計。

    また、当時タグホイヤーには金メッキのモデルやコンビ、本物の金無垢モデルなど、積極的にイエローゴールドの色合いが採用されていましたが、キリウムはステンレススチールのみという硬派な内容となっています。

    当時のタグホイヤーとしては珍しく自動巻モデルを積極的にラインナップ。さらにムーブメントはクロノメーター仕様となっており、キリウムに対する腕時計造りの気合を感じられます。

    ですから、販売されていた当時の定価も30万円台という水準であり、新品実勢価格も20万円台というレベル。

    その頃のタグホイヤーは、クオーツ中心という印象があるため、オメガより安いというイメージが強いのですが、このキリウムに関しては、ライバルとなるオメガシーマスターより高い価格で売られていたのです。

    ちなみに、その頃シーマスターには300mと120mがラインナップされていましたが、両方とも実勢価格は10万円台

    ですが、オメガは今でも中古で10万円以上という価格を保っているのに対し、このキリウム約5万円という価格で買えてしまうのです。

    タグホイヤー キリウム WL5110(現在参考の腕時計がありません)

    本記事の価格比較

    腕時計 状態 期間 2012年8月
    の安値(ヤフオク)
    2017年8月
    の安値(楽天)
    変動額 残価率
    タグホイヤー
    キリウム
    WL5110
    中古 5年
    0ヶ月
    ¥58,000 ¥59,400 1,400 102.41%

    キリウムは2000年代後半から既に5万円という価格になっており、現在の相場が既に10年ほど続いている状況です。

    そのため、5万円で売られている時計という印象が強すぎて、

  • 定価30万円以上
  • クロノメーター仕様の自動巻機械搭載
  • という内容を忘れてしまいます。

    実際、今5万円で買える選択肢の中では最も定価が高く、その内容も自動巻クロノメーターであるため明らかにお買い得であることが分かります。

    また、キリウムにはクオーツ3針モデルも存在し、それが自動巻クロノメーターと近い額で売られているため、キリウムというシリーズ全体が5万円で買えるという印象になります。

    例えばオメガの場合、クオーツと自動巻クロノメーターの間には5万円程度の価格差があることも珍しくありませんが、キリウムの場合はクオーツと自動巻との価格差が1万円程度です。

    よって、このキリウムという時計、今5万円で買える腕時計の選択肢としてかなり面白い1本。

    時計の実力的にも、当時の価格的にも、当時のタグホイヤーの気合の入れようという側面でも、キリウムにはかなり濃い要素が詰まっています。

    ですから、いつでも5万円という印象のあるこのキリウムは、実はなかなか面白い時計であるのです。

    なおキリウムという時計は、LVMH体制になる前のタグホイヤーとして最後に企画された時計であり、防水スポーツウォッチがメインだった頃のタグホイヤーとしては最終コンセプトとなるモデルでしょう。

    そのため、様々な箇所にタグホイヤーの気合を感じるのです。

    特にデザインは、それまでのタグホイヤーのイメージを踏襲しつつ、他のブランドが採用していないような新しいデザインを採用。

    それでいて、針は前モデルの4000でも採用されていた伝統的な“ベンツ針”とするなど、随所に絶妙なバランス感覚が感じられる時計です。

    ちなみに、97年に登場した当初、針の形状が3針とクロノグラフとでは異なりましたが、2001年から3針モデルの針がクロノグラフと同じ形状となります。

    また、当初はクロノグラフモデルはクオーツのみでしたが、99年に自動巻クロノグラフが追加。

    機械式モデルのキリウムは2004年頃生産終了となったため、機械式モデルが生産された期間は短く、現在でも機械式クロノグラフのみ10万円近い価格帯となっています。

    プレカレラ時代における最後のタグホイヤーであるキリウムは、海外での評価もそこそこ高く、5万円で売られている腕時計ながら、実はかなり強い要素を秘めた時計であるのです。

    この記事の執筆者
    斉藤由貴生
    腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。
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