中古の高級腕時計といっても様々な価格帯が存在しますが、その最低価格はいくらになるのかといえば5万円という額が妥当だと感じます。
実際、10万円台前半でかなり安いという印象があり、人気モデルを買おうと思ったら25万円以上となるでしょう。また、ロレックスの場合、現在50万円以上という相場が多い傾向です。
そのため5万円で買える腕時計というと、あまり注目されることはなく、その存在は見過ごされがちです。
とはいっても5万円で買えるモデルの選択肢もそれほど多いわけではなく、特に注目されるようなモデルも少ないため、見過ごされても仕方ない側面もあります。
では、5万円で買える時計にはどのようなモノが存在するかというと、
などが存在。
そしてその中で特に輝いて見えるモデルこそ、タグホイヤーのキリウムです。
「キリウム」は1997年に「4000」の後継として誕生。
今のラインナップとは違い、当時のタグホイヤーは防水クオーツモデルが中心で、そのモデル名も「1500」とか「6000」というように数字が中心でした。
それに対して「キリウム」というモデルは、当時のタグホイヤーとしては約20年ぶりに登場した“数字でないモデル名”の時計。
また、当時タグホイヤーには金メッキのモデルやコンビ、本物の金無垢モデルなど、積極的にイエローゴールドの色合いが採用されていましたが、キリウムはステンレススチールのみという硬派な内容となっています。
当時のタグホイヤーとしては珍しく自動巻モデルを積極的にラインナップ。さらにムーブメントはクロノメーター仕様となっており、キリウムに対する腕時計造りの気合を感じられます。
ですから、販売されていた当時の定価も30万円台という水準であり、新品実勢価格も20万円台というレベル。
その頃のタグホイヤーは、クオーツ中心という印象があるため、オメガより安いというイメージが強いのですが、このキリウムに関しては、ライバルとなるオメガのシーマスターより高い価格で売られていたのです。
ちなみに、その頃シーマスターには300mと120mがラインナップされていましたが、両方とも実勢価格は10万円台。
ですが、オメガは今でも中古で10万円以上という価格を保っているのに対し、このキリウムは約5万円という価格で買えてしまうのです。
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2012年8月 の安値(ヤフオク) |
2017年8月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
タグホイヤー
キリウム WL5110 |
中古 | 5年 0ヶ月 |
¥58,000 | ¥59,400 | 1,400 | 102.41% |
キリウムは2000年代後半から既に5万円という価格になっており、現在の相場が既に10年ほど続いている状況です。
そのため、5万円で売られている時計という印象が強すぎて、
という内容を忘れてしまいます。
実際、今5万円で買える選択肢の中では最も定価が高く、その内容も自動巻クロノメーターであるため明らかにお買い得であることが分かります。
また、キリウムにはクオーツ3針モデルも存在し、それが自動巻クロノメーターと近い額で売られているため、キリウムというシリーズ全体が5万円で買えるという印象になります。
例えばオメガの場合、クオーツと自動巻クロノメーターの間には5万円程度の価格差があることも珍しくありませんが、キリウムの場合はクオーツと自動巻との価格差が1万円程度です。
よって、このキリウムという時計、今5万円で買える腕時計の選択肢としてかなり面白い1本。
時計の実力的にも、当時の価格的にも、当時のタグホイヤーの気合の入れようという側面でも、キリウムにはかなり濃い要素が詰まっています。
ですから、いつでも5万円という印象のあるこのキリウムは、実はなかなか面白い時計であるのです。
なおキリウムという時計は、LVMH体制になる前のタグホイヤーとして最後に企画された時計であり、防水スポーツウォッチがメインだった頃のタグホイヤーとしては最終コンセプトとなるモデルでしょう。
そのため、様々な箇所にタグホイヤーの気合を感じるのです。
特にデザインは、それまでのタグホイヤーのイメージを踏襲しつつ、他のブランドが採用していないような新しいデザインを採用。
それでいて、針は前モデルの4000でも採用されていた伝統的な“ベンツ針”とするなど、随所に絶妙なバランス感覚が感じられる時計です。
ちなみに、97年に登場した当初、針の形状が3針とクロノグラフとでは異なりましたが、2001年から3針モデルの針がクロノグラフと同じ形状となります。
また、当初はクロノグラフモデルはクオーツのみでしたが、99年に自動巻クロノグラフが追加。
機械式モデルのキリウムは2004年頃生産終了となったため、機械式モデルが生産された期間は短く、現在でも機械式クロノグラフのみ10万円近い価格帯となっています。
プレカレラ時代における最後のタグホイヤーであるキリウムは、海外での評価もそこそこ高く、5万円で売られている腕時計ながら、実はかなり強い要素を秘めた時計であるのです。