第一次腕時計ブームの頃のタグホイヤーといえば、ギリギリS/el(セル)が主力モデルというラインナップの時期。
S/elはブレスレットデザインが個性的なため、ひと目見ただけで「タグホイヤー」だと分かるデザインであり、タグホイヤー=S/elという印象を強烈に与えていました。
しかし、その看板モデルであるS/elは1999年頃に生産終了となり、2000年のカタログからはLINKという後継モデルにその座を譲ります。
S/elとLINKは別のシリーズというよりも、同一シリーズのフルモデルチェンジという変更に近いですが、単なるモデルチェンジではなくLINKへと名前が変わったのは、まさに新世代の時計であるということを強調したかったのでしょう。
S/elはクオーツ中心のラインナップでしたが、LINKはデビュー当初から自動巻クロノメーターモデルが大々的にアピールされていました。
とはいってもその内容は、LINK登場の3年前に出ていたキリウムと同様。
ですからS/elからLINKになって洗練されたというイメージがある一方、ムーブメント的には“クオーツから自動巻中心”という変化に留まっていたのです。
とはいえその変化はとても重要。機械を自動巻に変更するだけでも新世代になったという印象をユーザーは強く感じます。
けれどもその後、このLINKはさらに進化して、ついにはエルプリメロを搭載するモデルまで登場。
それがこのCT511Bです。
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2009年6月 の安値(ヤフオク) |
2017年8月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
タグホイヤー
リンク CT511B |
中古 | 8年 2ヶ月 |
¥298,000 | ¥180,000 | -118,000 | 60.40% |
LINKといえば、S/el後継というイメージが強く、先のように元はクオーツ中心のラインナップということからも、「エルプリを搭載している」ということはかなりの意外な出来事だと感じます。
エルプリメロといえば、デイトナやパネライのクロノグラフなどかなり高級機に搭載されているという印象がありますが、それらより安いラインナップであるLINKへ搭載されているというのは驚きです。
とはいってもこのLINKの定価はなんと78万円という水準。
LINKというとキリウムのように自動巻搭載でも安いイメージですが、エルプリ搭載モデルは高かったのです。
そのため、2009年の中古価格は約30万円という水準。
しかし、それが今となっては10万円台で購入可能となっています。
LINKというモデルは、カレラ中心のラインナップとなった今のタグホイヤーを見ていると、とっくに生産終了となったシリーズという印象すらあります。
けれども実はまだまだ現行の機種としてラインナップし続けられています。
ただ、もともとユーザーが持っているLINKのイメージと、エルプリが搭載されたLINKの区別が付きづらく結果的に安値傾向へとなっているのでしょう。
ちなみに、現在S/elの相場は程度の良いモノでも5万円前後という水準。
それと比べるとエルプリ搭載のLINKが10万円台後半というのはしっくりくる相場です。
とはいえ、この時計には価格面以外にもとても大きな面白みがあると感じます。
それは、まさにS/elの後継機にエルプリメロが搭載されているという点であり、クルマで例えるならば、8気筒エンジンを積んだVWパサートという感じです。
よってこのモデル、中古選びという視点では、かなり面白いモデルだと感じます。