スピードマスターといえばムーンウォッチの印象が強く、1960年代から形が基本的に変わらないという硬派な時計。
スピードマスターは当然高級腕時計に属するものでありますが、所謂「高級感」の要素はほぼ無く、その実質剛健さが良さの1つであると考える人も多いかもしれません。
そんな実質剛健なプロフェッショナルにおいて、豪華版として2001年に登場したのがブロードアロー。
実質剛健という印象が強いスピードマスターにおいて、形を踏襲した豪華版という存在は、プラチナのノーチラスのようなレア感といったら言い過ぎかもしれませんが、それほど意外性のあるモノだったのです。
ただ、このような事情は、説明されて初めて「なるほど」と思う点。例えば、当時の実勢価格が50万円というようなことになっていれば、よりインパクトが大きかったかもしれません。
しかしこのブロードアローのデビュー当時の新品実勢価格は約30万円という水準。
実際、同じ頃のムーンウォッチ3570.50の実勢価格が10万円台後半だったことを考えると立派な高額商品であるのですが、他のブランドと比較して相対的に見るとそこまで高いとも感じず、分かりづらいという印象でもあったのです。
実際、このブロードアローという存在は、「なにが高級なのか?」といわれたら時計に詳しい人でないと理解しがたい側面があります。
白文字盤とブルースチールのブロードアロー針がもたらす雰囲気が3570.50と違うため、一見すると「違う」ということは分かります。けれども、それは高級感の説明とはなっておらず、同時期に登場したムーンフェイズのほうが「WGベゼル」という要素とムーンフェイズの醸し出す雰囲気により、高級感の演出に成功していたと感じます。
ブロードアローが高級な理由こそ、そのムーブメントにあり、雲上ブランドや定価100万円以上モデル御用達の“フレデリックピゲ1185”を搭載しているという点なのです。
ブロードアローとムーンフェイズは、よく比べられる存在であり、実際2000年代半ばから2016年頃までの相場はほぼ同じ水準でした。
けれども最近ムーンフェイズのほうは40万円台という水準に達しようとしている中、ブロードアローの相場はほぼ変化していないのです。
本記事で参考とした中古腕時計
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本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2016年3月 の安値(楽天) |
2017年11月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
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オメガ
スピードマスター ブロードアロー 3551.20 |
中古 | 1年 8ヶ月 |
¥298,000 | ¥307,800 | 9,800 | 103.29% |
ムーンフェイズとブロードアローは双子の兄弟的に捉えられることがあり、両者ともWGベゼルと勘違いされがちですが、WGベゼルなのはムーンフェイズのみ。とはいえ、実は定価はブロードアローのほうが高いのです。
しかし、最近値上がり傾向なのはムーンフェイズであり『WGベゼル』『ムーンフェイズ』という内容が高級感やレア感などを感じるにあたり分かりやすいのだと思います。
なお、ブロードアローには白文字盤と黒文字盤がありますが、ムーンフェイズと同じ雰囲気である白文字盤のほうが新品当時の雑誌や店頭で多く見かけた存在です。
そのため、黒文字盤のほうは2016年頃でも25万円以下で購入可能。とはいえ、最近黒文字盤のほうは値上がり傾向でむしろ白文字盤より高くなっている印象です。
そして白文字盤についても興味深い点があり、2016年とほぼ相場が変わっていないものの現在30万円以下の個体が無いという点。
2016年からつい最近までは、20万円台後半の個体が多くあったため、その価格でこの時計を買う難易度は低かったのです。
それが今では30万円台という水準になっているため、変動した額そのものよりも「30万円台」という数値に重みを感じます。