2005年前後という時代は、パネライにとって過渡期だったといえ、その頃形成されたキャラクターが、現在のパネライに通じているといえるでしょう。
最も大きな点は、ラジオミールが脱高級化したというところですが、「脱高級化」というよりは、ラジオミールとルミノールを同じ位置づけにしたといったほうが正しいかもしれません。
2003年頃までの時代では、ラジオミールのラインナップは高級ドレス系モデルが大半だった一方、ルミノールの高級モデルはごく一部に限られていました。
それが2005年頃からは、ラジオミールにエントリーレベルのモデルが追加された一方、ルミノールにも高級品が用意されるようになったのです。
その筆頭といえるのが、ルミノールのPAM00212、PAM00213なのですが、前者がフライバック、後者がラトラパンテ(スプリットセコンド)クロノグラフという内容だったのです。
フライバックといえば、パネライにとっては「特別」というキャラクター。60番がそうであるように、高級といった印象があるわけです。
また、ラトラパンテはその更に上といった印象。ちなみに1998年版ブルガリのカタログを見ると、トゥールビヨンと同じ扱いでラトラパンテが掲載されています。
パネライのクロノグラフといえば、2003年までのエルプリ世代がそうだったように、高級という役割を担う傾向がありますが、2005年に登場したルミノール1950も同様なキャラクターだったわけです。
2005年以前のルミノール1950といえば、2002年に登場した127番をはじめとする限定モデルのみだったわけですが、それらの印象は「スペシャル」といった感じ。212番と213番は、ルミノール1950としては初の“通常版”ですが、その特別感、及び高級感は以前のモデルと同じ印象だったといえます。
そして、その翌年2006年に登場したのが、このPAM00233なのですが、このモデルこそ、パネライ初の自社製ムーブメントが搭載されたモデルです。
厳密には、2005年に自社製ムーブメントモデルが出ていたのですが、それらは特殊な限定モデルといった感じであるため、233番が初搭載という印象が強いように思います。
ですから233番は、新世代パネライのイメージリーダー的存在といった感じでデビューしたといえるわけで、その頃から高い注目度となっていたと感じます。
しかし、そんな233番は2010年代になるとそこまでの評価とはなっていない傾向があります。
2008年1月の水準は約101万円といったように、中古でも100万円以上という水準だったのですが、2016年9月になると約66万円にまで下落しています。
その後は2018年3月に約70万円、2019年4月に約86万円と上昇したものの、2008年水準を超えることはありませんでした。
そして今回、この233番は久々に下落傾向となっており、その水準は約69万円。再び、60万円台となってしまっているのです。
本記事で参考とした中古腕時計
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本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2019年4月 の安値 |
2020年4月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
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オフィチーネパネライ
ルミノール1950 PAM00233 |
中古 | 1年 0ヶ月 |
¥861,840 | ¥698,000 | -163,840 | 80.99% |
233番の評価が難しい理由としては、新世代パネライという点が大きいでしょう。
一般的な目線では新世代パネライのほうが評価されるかもしれませんが、マニア目線では2005年より前までのパネライに魅力を感じるといった嗜好があるように感じられます。
実際、プレリシュモンが高い評価をされているわけですが、プレリシュモンに近いほうが高いといった傾向もあり、その時代のモデルには濃い要素を含むものが多々ある印象です。
そういった意味では、2005年頃からの新世代パネライは、プレリシュモンとは対極にいるといえるわけで、今の時代の評価されづらいのかもしれません。