現在におけるパテックフィリップの人気モデルといえば「ノーチラス」や「アクアノート」などスポーツ系という印象ですが、腕時計ブームと呼ばれていた時代の「人気モデル」は大きく異なります。
腕時計ブームといわれたのは、90年代後半から2000年代前半ぐらいまでの期間ですが、その「ブーム」はブームで終わることなく定着。そのときから始まった腕時計人気が現在にも引き継がれているといえます。
しかしながら、そういった期間のなかで「人気」というトレンドは何度か変化。15年ぐらい前と今とではその常識が大きく異なるわけです。
では、15年前の様子はどうだったかというと、「ノーチラス」や「アクアノート」は邪道とされていました。
それらモデルを買うならば、他のパテックフィリップを持っているのは当たり前。「まずカラトラバを買ってから、コンプリケーションを買った上で、セカンドウォッチとして購入するのがノーチラス」などと言われたわけです。
実際、筆者は当時「スポーツ系のパテックしか持っていなかった」わけで、見事にそのような批判をされました。
けれども、面白いのは、その頃持っていたノーチラスの現在相場は、今では700万円台。批判した人が、持つべきといっていたカラトラバとコンプリケーションを数本買えるぐらいの水準に達しているわけです。
そのような経験を持つ筆者ですが、今こそ、「ノーチラス」が邪道とされていた時代において、王道とされていたモデルが面白いと感じます。
なぜなら、かつて王道と呼ばれたモデルは、現在のパテックフィリップ価格序列において、それほど高くないからです。
たとえば、この5054Pは、2000年代前半という時代において、「王道」を通り越して、誰も文句をいえない「憧れ」といった感覚がありました。
この左右非対称なコンプリケーションといえば、今ではノーチラスの5712/1Aの印象が強いですが、2000年代前半におけるイメージは5054だったわけです。
ちなみに、当時5054は、5055、5085/1と3兄弟といったところ。5054がクラシカル、5055がモダン、5085がブレスレット担当といったところで、それぞれ別のキャラクターが与えられていました。
ただ、プラチナモデルは5054にしか存在せず、特別感があったわけです。
しかし、そんな5054Pは今、約334万円という水準。
当時、このモデルよりも遥かに安かったノーチラス3800/1Aよりも安価で購入できるのです。
本記事で参考とした中古腕時計
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2019年7月 の安値 |
2020年12月 の安値 |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
パテックフィリップ
コンプリケーション 5054P |
中古 | 1年 5ヶ月 |
¥3,180,000 | ¥3,344,000 | 164,000 | 105.16% |
この5054Pを前回取り上げたのは、2019年7月ですが、その時と比べてやや値上がりしている様子はあります。
しかしながら、その値動きはノーチラスやアクアノートと比較すると「微々たる」という印象にすらなるわけで、かつて『憧れのプラチナコンプリケーション』だったという文脈を意識すると、魅力的な価格に思えてしまいます。
なお、この5054P、2001年2月の新品実勢価格は約268万円。それに対して、アクアノート5065/1Aは約92万円、ノーチラス3710/1Aは約83万円、3800/1Aは約75万円だったのです。
それが今や、3700/1Aは700万円以上、3800/1Aは390万円台、5065/1Aは360万円台という中古水準であるわけですから、5054Pの330万円台という水準は「お得」と感じるわけです。