2000年代前半のカラトラバにおいてミドルクラスに位置するこの5117。
5117は、ほぼ同じ構成の5107のベゼルが「クルドパリ」としたバージョン。
このモデルより以前から、カラトラバには通常のスムースベゼルバージョンとクルドパリバージョンを用意するというのが一般的。
ただ、クルドパリバージョンが用意されているのは、その時代におけるカラトラバのメインモデルという印象のため、2000年代前半のパテックフィリップにおいて5107や5117が最もオーソドックスなモデルという認識ができます。
そして、当時の新品実売価格も約100万円。オメガ=10万円、ロレックス=30万円、パテックフィリップ=100万円というように、いかにもパテックフィリップらしい金額だったのがこの5117Rです。
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2004年春頃の安値(タイムトンネル) | 2016年11月 の安値(楽天) |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
パテックフィリップ
カラトラバ 5117R |
新品 | 12 | ¥1,030,000 | ¥2,006,640 | 976,640 | 194.82% |
その2000年代前半に普通の選択肢として新品のカラトラバを買ったならば、今頃相場は“倍”という現象。
普通に買って10年後に自分の時計が倍の価格で売られているなんて、なんてすごいことなのでしょう。
ちなみにこの時計、先のように「オーソドックス」な選択肢であったため、当時これを買ってこんなにも高くなると思った人はいないでしょう。
まして、クルドパリはどちらかと言うと不人気要素なため、とても値上がりする時計のようには見えないのです。
クルドパリというのはギザギザな感じのベゼルの模様を指すことですが、この手の込んだ装飾は2000年代当時としては避けられがちでした。
しかしそれが今となっては5107よりも高めという値段に。
当時の不人気要素は今となっては人気要素、という例の象徴的な現象です。
2000年代前半より、多くの人が高級腕時計に親しみを持った現在こそ、このクルドパリがよく見えてくるのかもしれません。
ロレックスでいうと、5連ジュビリー仕様のGMTマスターがよく見えてくる現象のように、特徴的なデザインかつちょっと渋めの時計は良しとされる傾向にある模様です。
この5117の例のように、その時代で言われている“正解”は、次の時代の“正解”とは限らないということ。
どの時代においても“常識”とか“正解”とされるような事柄があり、それを人は信じてしまう傾向があります。
しかしながら、そんな“正解”とされるものは実は非常に疑わしいものであり、なんの指針にもならないのです。
ですから重要なことは、他の人が言う物差しを信じるのではなく、自分の物差しをを持つということです。