ロレックスミルガウス116400GVの2008年6月と2008年12月の相場を比較した場合、値下がりとなっています。今回はこの事例に基づく考察を行いたいと思います。
腕時計の相場が短い間に極端に下落するというのはあまり見られない現象です。
もちろん、日本国内の定価と中古で売られている価格には大きな差があるということはあります。
しかしそれは、単に異なる2つの条件下の価格を示しているだけで相場自体が下がったわけではありません。
また相場が下がるといった場合でも、何年かの長い時を経て変化する場合が多い傾向です。
そして、相場が下落したといっても、元の半分以下になることはあまりありませんし、なったとしても長い年月を要するでしょう。
例えば、2001年から値下がり状態が続くブルガリは2001年に中古が約30万円であるのに対し2017年は約16万円といったところですが、16万円という相場まで値下がりするのに10年以上の時間を要しています。
まして、同じく2001年にブルガリと同じような価格だったロレックスは倍近く値上がりしていますし、他の時計も一旦相場が下がっても再度高値になったりと、相場が上下していたりするのです。
このように、腕時計の相場は短期間に極端に安くなるということがあまり見られません。
以下の表を見ると分かる通り、2008年6月の相場が158万円程度、2008年12月の相場が65万円程度です。
一見すると、2008年と2018年?と勘違いしてしまいそうですが、両方とも2008年の相場。
つまり、たった半年間で新品価格が90万円以上も下落しているのです。
本記事の価格比較
腕時計 | 状態 | 期間 | 2008年6月 の新品実勢価格(5社平均) |
2008年12月 の新品実勢価格(5社平均) |
変動額 | 残価率 |
---|---|---|---|---|---|---|
ロレックス
ミルガウス (黒文字盤) 116400GV |
新品 | 0年 6ヶ月 |
¥1,587,800 | ¥654,680 | -933,120 | 41.23% |
腕時計の新型はデビューした時が最も高く、次第に値段が落ち着いてくるという現象があります。
それはこの116400GVが2007年にデビューする以前より知られている現象でした。
しかし、値段が落ち着くといっても、この116400GVほど“早く”“大幅に”値下がりするということは無かったのです。
例えば、ヨットマスターロレジウム(16622)はデビュー1年後の相場が約79万円なのに対し2年後の相場は約65万円。
これでも大きく値下がりしたという印象になりますが、その額は14万円。しかも1年以上かけて14万円の値下がりです。
116400GVの値下がりを見ると、この14万円が「たったの」というように思えてしまいます。
おそらく、これほどインパクトの有る値下がりは116400GV以外には無いでしょう。
なおこの時計、“かつて180万円で売られていた”という事実が有名なように、2007年における相場は180万円です。
それが2008年に入ると徐々に値下がりし、6月に約158万円となったわけです。
その際の値下がり額は約20万円なのですが、これはヨットマスターのような事例であり、特に気にかけるほどの値動きではありません。
しかしその後の値下がりはジェットコースターのような急降下。
その大きな原因として考えられるのがリーマンショックです。
2008年6月と12月の間にリーマンショックが起きています。
このリーマンショックにより、116400GVに限らず多くの時計の価格が下がりました。
とはいっても、他の時計の下落率はここまでひどいものではありません。
確かに、青サブ(16613)などがロレックスブーム以前の水準まで下がりましたが、下落額は20万円以下に収まる場合が多かったのです。
よってこのミルガウス116400GV、腕時計相場史上類を見ない値下がりを短期間にした時計としてギネス並の記録を誇っています。
なお、下落後の相場は安定しており、2012年頃の相場と2017年の相場の差が10万円以下という、現在のお買い得モデルです。
そして今後、ミルガウスが生産終了されるなどして、再度この時計が2007年の水準にまで相場が復活したならば、「伝説の腕時計」となるのは間違い無いでしょう。