腕時計投資新聞

腕時計の[買う・使う・売る]すべてを楽しむ専門サイト「腕時計投資ドットコム」
現在相場考察

パシャ42mmはジャガールクルトムーブメント、カルティエW31072M7

2017年6月9日更新
カルティエのパシャ42mmW31072M7について斉藤由貴生が執筆。本記事では2008年10月の安値(ヤフオク)と2017年6月の安値(楽天)を比較し現在相場を考察。この8年8ヶ月での変動は¥-62,000だった。

パシャ42mm W31072M7についての考察(2017年6月)

高級なパシャといえば、フレデリックピゲ製ムーブメントを搭載したパシャ38mmという印象があります。

パシャ38mmは90年代後半に登場した後、2000年代半ばで生産終了となるのですが、その理由は世代交代。

2005年にデビューしたパシャ42mmは、パシャ38mmの後継モデルです。

このモデル、パシャ38mmのデザインをうまく近代化し、さらに2005年頃の“ケース拡大”という流行りもうまく取り入れたモデルだと思います。

しかし、パシャ38mmと比べると文字盤とブレスレットの形状が簡略化されたようなデザインとなっており、それがコストダウンとも取れてしまうという点がマイナス要素として存在。

特に文字盤は、パシャ38mmギョーシェ彫りだったのに対し、42mmは目立った加工がされていない通常の文字盤。

それはコストダウンではなく、「シンプルさの演出」という可能性もありますが、パシャ42mmの場合、金無垢モデルとなるとギョーシェ文字盤が採用されているため、「コストダウン」と評価されてしまう傾向です。

そんなパシャ42mmムーブメントの加工もパシャ38mmと比べるとシンプルになったため、魅力がないかと思われてしまうのが残念なところ。

しかし、実際はジャガールクルトベースのキャリバー8000MCというムーブメントが搭載されており、手を抜いたモデルではないのです。

同じくリシュモングループであるジャガールクルト製のムーブメントをカルティエが採用するというのはとても良いコラボレーションだと感じます。

ジャガールクルト製のムーブメントを搭載し、パシャ独特の世界観があるというのはとても魅力的。

さらにパシャ38mmの場合、3針モデルのベースムーブメントはジラールペルゴ製だったため、見方によってはグレードアップという表現もできるでしょう。

ただ、パシャ38mmジラールペルゴムーブメントはオーバーシーズにも採用されているぐらい上級なモノ。

いずれにしても、パシャ38mmの後継としてパシャ42mmはきちんと成立する内容となっています。

カルティエ パシャ パシャ42mm W31072M7¥470,800〜¥517,000(2024年11月23日現在)

本記事の価格比較

腕時計 状態 期間 2008年10月
の安値(ヤフオク)
2017年6月
の安値(楽天)
変動額 残価率
カルティエ
パシャ42mm
W31072M7
中古 8年
8ヶ月
¥450,000 ¥388,000 -62,000 86.22%

現在、パシャは基本的に生産終了。

カルティエカリブルドゥカルティエを中心に自社ムーブメント化を推進していますが、このパシャ42mmのようにリシュモングループの他ブランドから良いムーブメントを調達するというほうが、魅力ある時計になると感じます。

時計ファンとしてカルティエに期待するのは、ムーブメントそのものよりも、独特の世界観だと思うのです。

パシャのように、他では見ることのない独特なデザインであったり、そのモデルが誕生したストーリーなどに大きな価値があるわけで、その魅力ある時計の中身にジャガールクルトなどが搭載されていることでその価値がより増幅します。

最近、金無垢ラジオミールルミノールクロノなど高級モデル時代のパネライが評価されていますが、それらはパネライの自社製ムーブメント搭載モデルよりずっと評価されているのです。

パネライにもカルティエにも望むのは、マニュファクチュール化ではなく、リシュモングループの魅力あるムーブメントを搭載したモデルを作ることだと強く思います。

例えば、ランゲ&ゾーネのムーブメントを搭載したプラチナラジオミールが限定で出たとなれば争奪戦となるでしょう。

そしてこのパシャ42mmは、ジャガールクルトムーブメントを搭載するという良い方向性なのに、2008年と比べて値下がり状態かつ30万円台後半で買えるという存在。

この人気のなさは先のように、コストダウンモデルと誤解される傾向があるからでしょう。

高級ムーブメント搭載のパネライが値上がりしている中、このパシャはなかなか魅力ある1本だといえるでしょう。

この記事の執筆者
斉藤由貴生
腕時計投資家。著書:『腕時計投資のすすめ(イカロス出版)』『もう新品は買うな(扶桑社)』連載:本サイト以外に『日刊SPA!』『POWER Watch』その他『日経マネー』など多数露出。
本コンテンツには、主観的評価、見解、想定における情報が含まれています。運営者及びコンテンツ提供者は、コンテンツ内容の正確性、確実性、完全性における保証を行いません。また、コンテンツ内容にかかわる損害・トラブル等に関する一切の責任を負いません。本サイトに記載されている情報は、特に断り書きがない限り、更新日時点での情報に基づいています。